第2章52話:ホッズボア


翌朝。


朝食を摂り、テントを片付けて出発する。


森を進む。


最初はウルフなどが出現していた。


しかしだんだんホーンラビットや、ニワトリ型の魔物が増えてくる。


つまり、出てくる魔物がどんどん弱くなっていた。


人里に近づいている証拠だ。


村や里などは、強い魔物のそばには作られない。


魔物がいないか、あるいは弱い魔物しかいない場所にできるものだ。


「出てくる敵が弱くなってきましたね」


エドゥアルトも同じことを思っていたのか、そう感想を述べる。


私は同意した。


「そうですわね」


しかし、私たちとは逆に、不穏な顔になっているのがフランカだった。


「でも、なんでしょう。なんだかこのあたりの魔物は、殺気立ってるような感じが……?」


そんな所感を述べる。


と、そのときだった。


「グオオオォォォォォオッ!!」


地を震わす魔物の低いうなり声。


同時に、声の主が姿をあらわす。


ゲームで見た魔物だ。


「こいつは……ホッズボアですわ」


ホッズボア。


巨大なイノシシ型の魔物。


序盤に出てくる中ボスのような存在であり、そこそこ強い。


が……。


私たちの敵ではない。


「私が殺ります」


エドゥアルトが静かに言ってから駆け出す。


疾風のごとき素早さで、滑らかに間合いを詰める。


目にも留まらぬスピードで剣を振るった。


「グォォォォオオオオッ!?」


ホッズボアが叫び声をあげる。


しかし一撃で倒しきれなかったようで、ふらつきながらもホッズボアは持ちこたえた。


そこにすかさず、フランカが飛び出す。


「ハァッ!!」


凪ぐ一閃が走り抜ける。


フランカの斬撃がホッズボアを捉え、切り裂いた。


今度こそホッズボアは断末魔の叫びを上げる。


そして倒れ伏した。


「お疲れ様。二人とも、相変わらず手際いいですわね」


私はそうねぎらいながら、ホッズボアをアイテムボックスに放り込んだ。


もはやルーティンワークである。


と、フランカが言う。


「周囲の魔物が殺気立っていたのは、ホッズボアのせいだったんですね」


「そのようですわね」


ホッズボアが他の魔物の縄張りを荒らしたから、魔物たちが怒っていたのだ。


原因も除去されたし、魔物たちの怒りも収まるはずだ。


「さ、村は近いですわよ。いきましょう」


私はそう言って、歩き出した。

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