第2章40話:語らい2
ダイラス魔法大学の魔法学部・魔法学科。
それが私が受験する予定の学科だ。
「そうなると……私とは別々の学科になりますね。その場合、取り巻きの仕事ってどうなるんでしょう?」
「一緒にいられるときに一緒にいてもらえれば結構ですわ」
「なるほど……そうなのですか」
「やはり取り巻きの仕事は不安ですかしら?」
「不安がないといえば嘘になりますが、ルチル様はお優しい方ですし、昨日よりは不安が少ないです」
「わたくしが優しいなどと思っていると、期待を裏切られることになりますわよ? いずれ世紀の悪役令嬢として暴れまわるかもしれませんわ」
「ふふ、ご冗談を」
フランカが笑う。
そのときエドゥアルトがふいに言ってきた。
「悪役令嬢、という表現は面白いですね」
フランカが同意する。
「戯曲などに出てくる、意地悪な令嬢のことですよね? でも、ルチル様には似合わない言葉だと思います」
「あら。わたくし結構、意地悪ですわよ?」
「あまり想像できませんね」
フランカ……ちょっと私への評価を上げすぎじゃないかな。
まあでも、少しずつ打ち解けてきた感があるのは良かった。
最初のころは、とにかく私へ粗相をしないようにとビクビクしていたからね。
自然体でいてくれたほうがこちらとしても有難い。
しばらく語り合った後。
夜が深まり、本格的に眠くなってきたので……
テントを設営した。
生物除けのために【結界魔法】を使い、結界をテント周辺に展開する。
そしてテントに入る。
眠りにつこうとしたとき、ふと頭の中に声が聞こえた。
『二人と打ち解けられたようね』
シエラ様である。
私は念話で答える。
『……まあ、向こうはこちらに好かれようと努力しますもの。わたくしが横柄な態度を取らなければ、自然と仲良くなれますわよ』
『うーん……あなたの場合、どこか親しみやすいところがあるのが大きいと思うけど』
『そうですの?』
『そう。貴族の割に庶民的というか、威圧感はないでしょう?』
ああ。
それは前世が庶民だからだろう。
根本的なところで庶民感覚が抜けないのだ。
魂レベルで庶民根性が染み付いている。
でも。
『それを言うなら、シエラ様のほうが威圧感はないでしょう? 精霊ですが、とても話しやすいですわ』
『話しやすいと言ってもらえるのは光栄ね。でも、あたし、そんなに威圧感ないかしら?』
『良い意味ではありますが、親しみやすいと感じますわ』
それはお世辞ではない。
精霊とは人間からすると信仰対象ではあるが、シエラ様は、女友達のように話しやすいところがある。
『さて……わたくしはそろそろ寝ますわね。一日中歩いて疲れましたもの』
『ええ。おやすみ。良い夢を見なさい』
シエラ様がそう告げて、消えていく。
私は就寝する。
こうして冒険1日目は過ぎていった。
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