第1章17話:錬金術

洗礼式が終わってから……


私は、気持ちを切り替えて錬金術の勉強を始めた。


錬金術の本を購入し、


理論を学び、


実践する。


そして、半月後。


私は錬金術のとんでもない可能性に気がついた。


「錬金術ってすごい! なんで今までコレを学んでこなかったのかしら!」


自室にて、私は狂喜乱舞きょうきらんぶする。


錬金術師とは薬師のような仕事だと、そう理解していた。


だがそれは違っていた。


錬金術師とは、どちらかといえば、科学者である。


そう。


錬金術を使えば……


現代日本の科学技術が、この世界でも再現することができるかもしれないのだ!


(前世の技術がこっちでも作れるんだ! なによ、錬金術師って超当たり職じゃん!)


この世界の生活レベルは中世ヨーロッパ並みか、それ以下だ。


食事も。


生活も。


娯楽も。


現代日本の暮らしにはあまりにも遠い。


しかし錬金術に、私が学んできた理系や工学の知識を交えれば……


きっと、私の生活は変わる!


この国も変わる!


それだけの可能性を、私は錬金術に見出していた。


(極めよう、錬金術を……!)


このとき。


私にとって、一つのライフワークが定まったのだった。






さっそく私は父上にアトリエを用意してもらえるように頼んだ。


父上は難色なんしょくを示した。


そもそも私が錬金術師という適性職だったことに、眉をひそめていたぐらいだから。


しかし私が、


「トマトケチャップ並みの発明を、錬金術で実現できるかもしれないのですわ」


と告げると、話を聞く気になってくれた。


そして空き部屋の一つをアトリエとして使わせてもらえるようになったのだ。







それから私は、のめりこむように錬金術の習得に励んだ。


錬金術を学ぶこと。


そこに科学や工学の知識を盛り込むこと。


そして実践。


実践、実践、実践。


試行錯誤。


その繰り返しだ。


そして二ヵ月後。


私は、ある道具の開発に成功した。


――――シャンプーである。


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