第1章6話:金策を考える

月日は流れる。


110歳となった。


春。


屋敷の自室にて。


私はふと考える。


―――このゲーム世界は過酷である。


戦争が起こったり。


魔物の大軍が攻め込んできたり。


なかなか波乱万丈なストーリーで、主人公キャラは四苦八苦していた。


そして何より……敵が強い。


攻略法がわからなかったときは、結構真面目にレベリングしてたのに死にまくった記憶がある。


ゲームだったら死んでもセーブポイントからやり直せる。


しかし異世界にセーブやロードはなく、死んだらそこで終わりだ。


自分の生は一回きりだ。


一回で、すべての難事なんじを切り抜けなくてはいけない。





このゲームにおいて、最大の攻略法は「スキル石を集めること」である。


スキル石とは、使用するとスキルを習得することができるアイテムだ。


いろんな場所に隠されていたり、


強力なフィールドボスを倒すことでゲットできたり……


通常のプレイングでは入手しにくいレアアイテムである。


スキル石をゲットすることで攻略が格段に簡単になる。


いわば救済アイテムだ。


これを入手するかどうかで、生存率が段違いに変わるだろう。





そしてスキル石を最も効率よく集める方法は……


カネで買うこと、である!


スキル商人と呼ばれる者たちが各所に配置されており、そこでスキル石を購入することができるのだ。


ちなみに公爵領の領都にも一人いる。


実際にいるかどうか、確認してきた。


路地裏の奥である。


こういうわかりにくいところにいるんだよね。スキル商人は。


でも、いることが判明したのだから、あとはスキル石を買うだけだ。


とはいえスキル石は高い。


数千万とか数億とか、とんでもない金額設定になっている。


いくら公爵家のお小遣いがあっても気軽に買える値段ではない。


なので金策が必要となる。


私は考えた。


「商売をしましょう!」


私のプランはこうだ。


前世の知識チートで商売を成功させる。


それで稼いだお金でスキル石を買いまくる。


あとはのんびりと異世界生活を送る。


うん……完璧ではなかろうか?


さっそく商売のネタを考えなければ。


……と、そのとき。


とんとん。


ノックとともに、メイドが入室してくる。


「失礼致します。本日の夕食は、何に致しましょうか?」


夕食……か。


私はそこでひらめいた。


「そうですわね。今日は自分で作ってみてもよろしいでしょうか?」


「……? え?」


メイドはきょとんとした。


なので私は再度、告げた。


「自分で夕食を作りたいと思うのですわ」


「……ルチル様が、ですか?」


「はい。試してみたい料理がありまして」


そう。


私が考えたのは、料理チートであった。


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