第1章5話:知識の整理

<ルチルの視点>


1年が過ぎた。春。


106歳。


この世界のことが少しずつわかってきたので、頭の中で整理しておく。


まず、私が住んでいるこの国は【クランネル王国】というらしい。


人口200万人程度の小国しょうこくであり、海に面している。


そしてわが公爵家は、やや辺境の地にある【ミアストーン領】を治めている。


ちなみに軍の名門らしい。


なんと父上は王国軍の司令官なのだとか。


実際、父上は、よく戦争に駆りだされている。


現在は激動の時代であり、争いが頻発ひんぱつしているからである。


イヤな世の中だね。


平和が一番だというのに、全く。






さて、わが公爵領についても整理しておこう。


ミアストーン領は公爵家の領地だけあって、王国有数といっていいほど広大である。


領都りょうとを中心として、街や村の数も多い。


ちなみに、私たちが住んでいる公爵邸は領都の外れにある。


小さな庭園つきの二階建ての屋敷であり、背後に山、周辺を雑木林ぞうきばやしに囲まれた立地である。


ここで家族4人、使用人20人とともに暮らしている。


……と言いたいところだが、実際に家にいるのは使用人のみなさんがほとんどだ。


父上は軍の仕事で忙しく。


母上は学者の仕事で忙しく。


姉上は海外にいるので屋敷にはほとんど顔を出さない。


ゆえに家族のみんなと共に過ごせる時間は少ないのだ。


でも、さびしいかといわれたらいなだ。


使用人のみなさんがいるし、親も姉妹も存命なのだから。


前世では……


兄妹もおらず、両親も早くに事故で他界していた。


親代わりに育ててくれた祖母も、私が大学に入学すると同時期に寿命で亡くなってしまった。


本格的に一人になってしまったときは、寂しくて泣いたな。


だから。


異世界であれ、新しい家族に恵まれて、とても嬉しいし、満ち足りている。


転生させてくれた神様に感謝する毎日だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る