腐海のほとり【短歌二十首】

汐田大輝

僕の見る世界はすべて不確かで

僕の見る世界はすべて不確かで腐海のほとりさまよっている


焦点の定まらぬ眼で何見てるどこにもいない神を見ている


雨漏りがしそうで不安な僕の部屋いろんな色で塗れば楽しい


あああんな空の高くで遊んでるダイヤモンドの眼を持つ少女


ロッカーの中にただよう風のおと宇宙のへりの鳥の羽ばたき


蜘蛛の巣にからめとられた蝶の眼は聖母マリアの優しさに似る


生誕日憶い出せないその日から僕らの日々は永遠の中


寂しくて仕方ないから真っ青な空を見つめて時おりハモる


幻を取り締まってる天使たちその銃口は僕に向いてる


なぜかって聞かれてももうわからない遠い昔の詐欺師の話


その昔世界平和の象徴の真白き鳩の葬送の歌


Loveこそが全てだなんて本気かい君のジョークは糖蜜の味


ここあそこどこもかしこも闇の中君のうわ言だけが聞こえる


夜もすがら我の不眠に寄り添える一心同体やさしき悪夢


あとちょっと寝かせてくれよ頼むから右後頭部の銃が冷たい


ああいえばこういうこういえばああいうどういうつもりだこの極楽とんぼ


異次元の隙間にはまったあの娘から不可聴域のメッセージ来る


春の野をふわふわ飛んで僕の眼に映っているのは世界の終わり


あの人のサナギの身体からだ抱きしめて今日は闇夜を泳いでいたい


愚者たちの声のあまねく響く丘たったひとりのガリレオがいた

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