第48話 到着

この大陸はかなりの広さがある。


おそらく、ヨーロッパ大陸くらいはあるんじゃないだろうか? 知らんけど。


ちなみに、この大陸の他には大陸は残っていないらしい。


というのも、神話時代においてこの大陸以外は水没してしまったと。


その生き残りが、全てこの大陸に逃げ込んで今に至ると歴史ではなっている。


その真実はわからない。


ただ船を作って探したりもしたが、未だに見つかっていないのは事実である。


「とまあ、そんな世界観です。試験には出ないので、みんなは覚えなくて良いからねっ!」


「何を言ってるの? これは普通にテストに出るわよ。というか、定期試験の勉強はしてるのかしら?」


「いや、してないけど?」


「そんなキリッとした顔で言うんじゃないわよ!」


「待て待てっ! 馬車の中ではやめろって!」


目の前座っているセレナが、俺の両肩を掴んで揺らしてくる!

みんなお待ちかね『おっぱいぶるんぶるん』のお時間です!

俺ですか!? 俺は揺らされていて見る余裕がありません!

というか、酔いで吐きそうです!


「おいおい、着く前から体力を使うなよ。セレナ様も、少しは落ち着いてくださいって」


「うぇ……俺は何も悪いことしてないぞ」


「だ、だって、みんなで進級したいじゃない……アレクは、ただでさえ単位が危ないのに」


「まあ、それはそうっすね。なら、セレナ様が教えてあげれば良いんじゃないですか? それこそ、アレクの部屋でとか」


「ア、アレクの部屋で……?」


「おい! 親友! そんなのは嫌だっ! というか、 俺を売るとは何事だっ!」


「どういう意味よっ!?」


「そういう意味だよっ!」


こんなのが近くにいたんじゃ集中できん!

俺が何かの間違いで手を出してしまったらどうするんだ!

こちとら思春期の肉体を持て余しているというのに!


「クスクス……」


「メルル、どうしたの?」


「何をニコニコと……まさか、俺が虐められてるのが楽しいかい?」


「ち、違うんです! ……楽しいなって。こうして四人で過ごすのは久しぶりだったので……と言っても、まだ入学してから一ヶ月くらいしか経ってないんですけど」


「まあ、メルルは人気者だからね。いや、俺以外はといったほうが正しいか」


最初は面倒を見ていたメルルだけど、すぐにその必要はなくなった。

確かに、未だに獣人ということで、あーだこーだいう奴はいる。

でも、メルルは良い子だし、それも徐々に減っていくと思う。

……むしろ、俺といない方がいいのでは?


「それな」


「そうね」


「ひどくね?」


「え、えっと……アレク君は良い人ですっ」


「メルル! ありがとう! ウンウン、きみは良い子だ」


「あはは……」


「気を遣わせるんじゃないわよ」


「全くだな」


「リア充の二人は黙ってなさい」


……と言いつつ、俺もなんだかんだで楽しんでいる。


これが遅れてきた青春って感じかな。





そして休憩や食事を挟みつつ……お昼過ぎに、目的地に到着する。


そこは柵に囲まれた広い場所で、真ん中には小さな砦が立っている。


生徒である俺たちは、その柵の中でテントを張り、そこで寝泊りをして校外学習をする流れだ。


「くぅー……疲れたぁ……!」


「こ、腰が痛いわ……」


とりあえず、俺達も準備をするため馬車から降りたが……すでに満身創痍である。

慣れない馬車での長時間移動、ガタガタと揺れる道は中々にキツイ。


「おいおい、まだ着いたばかりだろうが……まあ、無理もないか」


「トール君は平気そうですね? 獣人の僕は、何ともないですけど」


「ほら、俺は馬術部だからな。馬に揺れるのも慣れてるし、そもそもこいつらと違って引きこもりじゃないし」


「「引きこもりいうなし!」」


「箱入りお嬢様と一緒にすんな!」


「何よ! そっちは正真正銘の引きこもりじゃない!」


「「ぐぬぬっ……!!」」


すると、見かねたノイス先生がやってくる。


「はい、そこまでですよ。仲が良いのは結構ですが、これは授業の一環でもあります。きちんと遊ぶ時間や休憩時間はあるので、まずは作業をしてください……わかりましたね? あなた方は王族なのですよ? 生徒達の見本になって頂かないといけません」


「「……はぃ、すみません」」


その言葉に、流石の俺達も……ぐうの音も出ないのだった。







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