第42話 セレナ視点

 ……もう、なんなのよ、一体……。


 いきなり婚約解消されて、アレクの様子が変だから様子を見たりしてたけど……。


 部活を通して昔みたいに遊んでくれたり、昔の思い出を話してくれたり……。


 さっきなんか、あんな風に庇ってくれたり……かっこよかったなぁ。


 たった今、私の心の中はアレクでいっぱいだった。


「うぅ〜あんなことされたらもっと好きになるに決まってるじゃない……アレクは、どういうつもりなのかな?」


「あら〜どうしたの?」


「お、お母様!? いつからそこに?」


「もっと好きになる辺りかしら?」


「っ〜!? いるなら声をかけてください!」


 は、恥ずかしぃ……聞かれちゃったわ。

 まあ……お母様には、アレクを大好きなことはバレちゃってるんだけど。

 さっきは口止めしたけど、昔から『アレクのお嫁さんになる!』って言ってたし。

 嬉しかったんだよね……アレクだけが、私と対等に接してくれたから。

 さっきみたいに同じ王族からは絡まれるし、下の人達は敬遠されちゃうから。


「ちゃんとノックはしたわよ〜? それより、今日は災難だったみたいね? 詳しいことはわからないけど、衛兵の方に聞いたわ」


「……まあ、いつものことだけどね」


「あの方も仕方ないわね〜。私に直接言ってくればいいのに」


「流石に、それはまずいってわかってるんだと思うわ」


 元侯爵令嬢にして、第一王妃なのでお母様の方が立場は上だ。

 しかも、お父様の愛情を受けてますし。

 ……それがまた、気にくわないのだと思うけど。

 だから代わりに私のことをいびったり、妹のルナに言ったりしていた。

 それもあって、妹のルナは留学させたんだけどね。


「そうよね〜。だから、私のいないところで言うんでしょうけど……そろそろ面倒だわ」


「だ、大丈夫だから! だから、何もしなくて良いから!」


 普段はのほほんとしてるお母様だけど、その処世術は凄まじい。

 社交界での顔も広いし、その気になれば第二王妃を孤立させることもできるかも。


「そう? でも、可愛い娘を虐められてお母さんは怒ってます」


「……ふふ、ありがとう。でも、本当に大丈夫」


「あら〜その顔は……なんか、良いことがあったのね?」


「べ、別に! 大したことじゃないもん!」


 だって、アレクが助けてくれたもん。

 いつもと違って堂々していて、横顔が物凄くかっこよかった。

 もう、あんな顔もできるんじゃない……普段からしてれば良いのに。

 ……それはそれで、なんだか寂しいかも。


「ふふ、アレク君にはお礼を言わないといけないわね〜。それにしても……どういうつもりなのかしら? さっきも、陛下とお話しをしたのだけれど」


「アレクのこと?」


「ええ、そうよ。実際会ってわかったけど、確かに変化があったわ。こう、大人びたというか、達観したというか……言葉にするのは難しいのだけれど、急に歳を重ねた感じかしら?」


「そ、そう! そうなの! アレクったら、いつもみたいに巫山戯てるかと思ったら……急に大人っぽくなったりして」


「ふふ、それでドキドキしちゃったのね〜?」


「っ〜!? し、してないもん!」


 嘘だ……物凄くドキドキして心臓が飛び出るかと思った。

 手を繋がれた時も力強くて、ずっとドキドキしていた。

 私からは引っ張ったことはあったけど、ああいう風に引っ張って貰ったことはなかったし。

 その意外と……アレクも、男の人なんだなって。


「いいじゃない〜貴女は、もう少し素直にならないと駄目よ? アレク君とまた復縁したいならね」


「うっ……わかってるもん」


「とりあえず、そろそろ林間学校もあるし……まずは、班でも組みなさいね〜。あとは、お色気で攻めても良いわ〜……既成事実さえあれば、どうとでもなるから」


「お、お色気……既成事実……はぅ」


「あら〜まだ早かったかしら? でも、ライバルも多いから早くしないと取られちゃうわよ?」


「……うん、それはわかってる」


 そうだ、カエラはもちろんメルルだって。


 それにアレクが気づいてないだけで、意外と女子生徒からの人気は高い。


 基本的に人を見下さないし、偉ぶらないから。


 最近では心を入れ替えたと評判になってきてるし……。


 このままではまずいわ……よ、よーし! 私も頑張らないとっ!

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