第7話 世界のこと

 ホームルームが終わると、十分の休憩時間になる。


 ちなみに午前中は三限の後に昼食、午後は二限で終わり放課後となる。


 授業の合間には休み時間があり、部活なんかもある。


 この辺の仕組みも、前の世界の高校生と変わらないので個人的には助かるな。


「さて、十分あれば寝れるな」


「あ、あの!」


「うん? どうかした?」


「そ、そのぅ……」


 もじもじしているので、じっと待つことにした。

 退屈なので、改めてメルルを眺めてみる。

 見た目は普通の可愛らしい女の子だ。

 お目目がぱっちりして、口元は小さいし。


「ふむ」


 頭の中から、二つのふわふわそうな耳が出ている。

 確か、これ自体には耳としての役割はなくて、何かセンサー的なやつとか。

 気配を感じたり、人には聞こえないものを感じることができるらしい。

 それにしても……この耳可愛いなぁ。

 流石に触ったらダメだよね? 仲良くなったら触れるかな?


「そ、そのぅ……何か変ですか?」


「うん? ああ、ごめんごめん……可愛いって思って」


「……へっ? ほ、ほんとですか?」


「うん、ほんとだよ。それより、何か話しがあったんじゃないの?」


「あっ……アレク君って、呼んで良いですか?」


「なんだ、そんなことか。うん、もちろん。というか、俺はメルルって呼んじゃってるけど良いかな?」


「は、はいっ!」


「よし、決まりだね……あっ、チャイム鳴っちゃった」


「ごめんなさい、昼寝をしようとしてたのに」


「いやいや、気にしないで。ほら、授業が始まるよ」


 年配の女性であるエリ先生が教壇に立ち、授業が始まる。

 しかし、その際に再びセレナと目が合う。

 その顔は驚愕に染まっており、俺を睨みつけるようだ。

 ……俺、何かしたっけ?


「では、留学生がいるので良い機会ですね。この大陸には四つの国が存在します。人族が治めるアルカディア王国、獣人族が治めるガイア王国、エルフ族が治めるユグドラシル王国、竜人族が治めるドラグノア王国ですね。アレク君、それぞれの国の位置を簡単でいいので答えてください」


「えっと……大陸は台形の形をしていて、アルカディア王国が最南西から真ん中にかけて丸みを帯びた形で占めています。その上から滑り台から落ちるように、西から順に竜人族の国、獣人族の国、エルフ族の国となっています」


 この国の大部分を占めるのが人族の国だ。

 というより、人族は繁殖率が高い。

 エルフ族は長生きだし、そもそも子供ができにくい。

 獣人族は、短命なので数はそこまで増えない。

 竜人族はそもそも数が少ない。

 なので、どうしても人族の地域が多くなる。


「はい、良いでしょう。彼らは我々とは違った習慣や歴史があります。それ故に、争いが起きた時代もありましたが……今では、友好関係を築いております。もちろん、まだまだ問題は多いです。しかし、この留学制度もそれを理解する一環です。みなさんは貴族の生まれですので、この先に他種族と関わるでしょう。できれば、今のうちに慣れてくださいね」


「「「はい!」」」


 返事だけは良いけど、その本質はどうだろうね?

 友好関係を築いているとはいうけど、まだまだって感じだし。

 人族が他の種族を奴隷にしていた歴史もあるし、こっちの都合のいい様にしてることもあるだろうし。






 その後、授業が続き……昼休みになる。


「はぁ、疲れたぁ」


「お、お疲れ様です」


「いやいや、メルルこそお疲れさん。ところで、授業は大丈夫だった?」


 授業内容も前の世界に近く、歴史や異世界語、数学や理科なんかもある。

 特に人族は、色々なことを勉強する。

これは、他の国にはない特徴らしい。


「は、はい! 色々と聞いてすみませんでした……」


「一応世話係だし、何でも聞いていいからね」  


「それじゃ……あの、お昼ご飯とかって何処で食べるんですか?」


「ああ、そうだよね。じゃあ、一緒に食べようか?」


「い、いいんですか?」


「そりゃ、もちろん」


 すると、トールが肩を組んでくる。

 どうやら、俺の手伝いをしてくれるらしい。


「おいおい、俺も混ぜろよ」


「はいはい、わかったよ。メルル、こいつはトール。悪い奴ではないから、安心していいよ」


「トール君ですね! メ、メルルっていいます!」


「メルルちゃんね、よろしく」


「よろしくお願いします!」


「それじゃ、食堂に行こ……」


 そこで気づく……セレナが恐ろしい視線を向けていることに。


「どうした?」


「い、いや、セレナ様が……」


 そして立ち上がり、そのまま俺の元にやってくる。

 しかも、鬼の形相のままに。


「ア、アレク」


「な、なんでしょうか?」


「その……私もお昼ご飯一緒に食べるわ」


「嫌ですけど?」


「それじゃ、食堂に……嫌? 今、嫌って言った!?」


 そう言い、俺の両肩を掴んで揺さぶってくる!

当然、目の前でおっぱいがバルンバルンと揺れている!

おぉぉぉ〜!? って眺めてる場合か!


「ちょっ!?」


「ど、どういうことよ!」


「どういうこともないし!」


 婚約解消したのに、そんなことをしてたら面倒なことになる!

 相手の親父さんに何を言われるか!

 それに、これからできる新しい婚約者にも誤解される!


「……ああ、そういうこと。セレナ様、お昼ご飯でもどうっすかね?」


「トール!?」


「ほら、王女様としては留学生と交流した方がいいかなと」


「ま、まあ、そうね。王女として交流は必要だわ。仕方ないから、アレクともご飯を食べてあげる」


「お、王女様なんですね! メルルっていいます! よろしくお願いいたします!」


「……よろしくですわ」


 こうして視線を浴びる中、何故か四人でメシを食う流れに。


 面倒なことにならないと良いけど……というか、どうしてこうなった?




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