【短編】夏の空の下、私たちは自転車で風を切る。
量子エンザ
第1話 再会
今年の夏は、一度も固定電話が
スマホの方が早いし確実ってのもあって、使う場面が
気が付けば八月三十日になっていて、夏休みは進む速度がとても早い。
夏休みは好き、だけれど夏は苦手。理由は暑すぎるから……という事にしておく。
時刻はお昼を過ぎていた。
三十度を示す温度計を見たとたんに、さらに暑く感じて見なきゃよかった、と後悔して。
扇風機で涼んでいた身体を持ち上げ、リビングの入り口にある電話機へ向かう。
この夏にやられた頭の
「もしもし?」
夏バテともいえる脱力感で発声した声は、だらしなくて笑ってしまう。
風がよく通るので伸ばしていなくて良かった、と思った。
踏んでいるピカピカのフローリング。目の前にある白色の
『もしかして、
あれ? まさかなと思った。
「えっと、もしかしてみふゆちゃん?」
『わー! 覚えていてくれたの? めっちゃうれしい。
アイスクリームがこの暑さで
遠い昔、父親の仕事の関係で、転校をしてしまった
久しぶりに聞いたみふゆちゃんの声は少し声変りをしていて。
当時、あたしの
『ねえ、今から会わない? 私、この夏休み明けからここの
ハッと驚く。みふゆちゃんが戻ってくる? この高校に? この町に?
「え?! 転校生ってみふゆちゃんの事だったの?!」
担任からは〝転校生〟が来ることだけを伝えられていたため、それがみふゆちゃんだとは夢にも思っていなかった。
あははっと笑っていた。『びっくりした?』
びっくりするに決まってる。
早く会いたい。
「とりあえず会おう! 待ち合わせ場所はそうだね……。高校の正門はどうかな?」
『いいね! そうしよう。
受話器を定位置に戻し、自室に戻る。
心臓の鼓動が激しくなるのを現すように、折れ戸のキャスターがガラガラと鳴る。
縦長のクローゼットを開け洋服を
「やっぱりおしゃれして会いたいよね。せっかくだし」
クローゼットの中から選んだのは、白色のふわふわなブラウスとひざ丈のピンクと黒のチェック柄プリーツスカート。
黒色のカーディガンを
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