第41話 王子、しっかりお風呂に入ろうと決意する

 僕はとりあえずカマバックを仲間達に紹介することにした。


『アドルきゅん遅い! みんなからの視線が熱いのよ。私の魅力に――』


『それはないから安心しろ。ワシはアドルだけだ』

『拙者も同じくアドル……バカネコいつのまにアドルのこと好きになったんだ!?』


『アドルきゅんは私のよ?』


『はぁん?』

『なんだと?』


 コボスケとヒツジはカマバックと言い合いをしているようだ。


 やはりみんな存在自体は知っているようだが、あまり関わりはなかったらしい。


 焼き鳥達やコカスケはオドオドと困惑しているぐらいだ。


『オイラ食べられるのかな……』


『吾輩は本体がこっちなので美味しくない……はず!』


 いや、あれはサドンが言っていた捕食される者達の困惑なんだろう。


 ちなみにカマバックに何を食べるか聞いたら、野菜や果物を中心の食生活だから安心して欲しい。


 乙女オネエは内面から綺麗になるために、肉は食べていないらしい。


 どうやらそういうやつらをビーガン系乙女オネエと呼ぶことを教えてくれた。


 カマバックは僕の知らないことをたくさん知っているようだ。


「あっ、みんな集まってくれ!」


『アドルきゅーん!』

『アドル!』

『ふん!』


 カマバック、コボスケ、ヒツジと僕を周囲で囲っている。側から見たら、僕は今から食べられる人に見えるだろう。


 本当にこいつらは変わったやつだ。


「さっきの倒れていたやつだが、僕の妹なんだ」


『アドルきゅんの妹だから……義妹なのね!?』


 カマバックは何か良からぬことを考えているようだ。


『なぜアドルの妹がいるんだ?』


「実は家族から旅に出ろと言われて僕は追放されたんだが、妹もそんな感じなのかな?」


 僕はこいつらに王族を追放されたことを話すつもりはなかった。だって、そんな話をして喜ぶ者はいないはず。


 だが、メアリーがここにいたら自然とバレてしまうだろう。それなら僕の口から大事なこいつらに話をしたかったのだ。


 妹がここに来た理由は後で本人に確認することにした。


『拙者、感動です』

『ふん。ワシがずっといてやるよ』

『きゅん♡ 弱ったアドルきゅんも最高よ』


 各々の考えていることはあるだろう。ただ、僕の話を真摯に受け止めてくれた。


 前よりもどこか距離感が近くなった気がする。


「お前らちょっと近いぞ」


 いや、物理的に距離が近くて押し潰されそうだ。


 それだけこいつらは自分から離れるつもりはないのだろう。


 言葉だけではなく態度でも示してくれるからわかりやすいし、居心地が良い。



――バタン!



「お兄様!?」


 音がしたと思ったらどうやらメアリーが起きたようだ。ただ、みんなに押しつぶされて話す余裕もない。


 とりあえずどこにいるかわかりやすいように、手を上げて振る。


「あの布団から香る匂いはやっぱりお兄様だったのね! 本当にここにいたわ!」


 あれ?


 メアリーってあんなにおかしなやつだったのか?


「はあはあ。私が今すぐ大好きなお兄様を助け出してあげるからね!」


 ん?


 妹は何か勘違いをしているのだろうか。


 僕はただ仲間に押しつぶされているだけだ。


 それよりも匂いで兄だとわかるものなのか?


 ひょっとしたらメアリーって匂いに敏感な子だったのかもしれない。


 そんなことも気づけない兄で辛かったよな。


「はぁ……僕臭かったのか」


 今日からもっと体を入念に擦って洗うことにしよう。


───────────────────

【あとがき】

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