許嫁はイケメン宇宙人

碧 心☆あおしん☆

第1話 



「おい。すず、迎えに来たぞ」


 そう言われたのは、中学3年生の海藤涼風かいとうすずかぜ


 今日15歳の誕生日を迎えた朝、部屋の窓からいきなり男の子が入って来て、言われた言葉がこれだ。


 普通なら恐怖で震え上がるだろうが、なぜか寝起きだったのもあり、恐怖はまったくなく、ただ呆然とその男の子を見入ってしまっていた。


 その理由は1つ。


 顔がとてもかっこよかったから。


 年齢は同じぐらいだろうか。髪は黒髪だが、目の色が綺麗な金色だ。


 ――なんて綺麗な目。


 吸い込まれそうな感覚に陥るほどの宝石のような金色。


 ――わあー、漫画の世界に出てきそうー。


 すると男の子は首を傾げて腰に手を当てる。


「寝ぼけてるのか? すず」


 涼風は反射的に首を振る。


 ――いやいや、ただ君に見とれてただけです。


 なんて言えるわけがない。


「じゃあ行くぞ!」


 そう言って男の子は涼風の腕を取り引っ張る。そこで涼風は夢心地な気分から現実に戻され、この異常な状況にはっとし、掴まれた手を腕をひっぱり振りほどいた。


「ちょ、ちょっと待って! どこに行くの? それにあなたは誰?」


 今度は男の子が呆然とし涼風を見て目を瞬かせる。


「覚えてないのか?」

「何を?」


 覚えてないのかとは何に対してなのか? 目の前のイケメンのことなのか、何か約束したことなのか。どこかで会ったことがあるのか。主語がなければわからないではないか。

 だからすべてひっくるめて涼風も応える。


「全部覚えてないわよ」


 すると男の子は腕組みをして首を傾げる。


「まあ確かにもう10年前だったからなー」


 ――まてまて、10年前って言った?


 10年前といえば、自分は5歳だ。幼稚園ではないか。そんな小さな時のことなんか覚えてない。


「じゃあ約束も覚えてないのか?」

「約束?」


 涼風は眉を潜める。


「ああ。15歳になったら俺の嫁になるという約束」

「はあ?」


 つい大声を出してしまった。寝ぼけていた頭も一瞬にして目が覚める。


「よ、嫁?」

「ああ」


 そこで涼風は頭をフル回転させる。


 ――そんな約束した? いつよ? 


 だがまったく身に覚えがない。


「それって本当に私だった?」

「ああ、すずだ」

「いつの話?」

「だから10年前」


 幼稚園の時の話だ。確かにそういう話はよくある。


『私、大きくなったら〇〇君のお嫁さんになるー!』


 なーんて、よくおませな幼稚園児の女の子が言うことだ。自分ももしかしたらそんな感じだったのかもしれない。



「覚えないけど、もしかしたら言ったのかもしれないけど、それは幼稚園児が言ったことだし」


 それにまずこんな幼稚園児の話、誰も大きくなって信じている人など誰もいない。

 だが目の前のイケメンは違った。


「だが約束は約束だ」


 爽やかな笑顔で言い切りましたよ。


「約束って、本当に信じてるの?」


 もしかしたら本当はおちょくっているだけなのではないのかと疑ってしまう。


「当たり前だ」

「またまたー。どうせからかってるんでしょ?」

「いや。からかっていない。本気だ」

「え……」


 涼風は目を細める。目の前のイケメンは嘘を言っているようには見えない。ということは、本当のことということだ。


「ちょ、ちょっと待ってよ! お互い名前も性格も知らない人と結婚するの?」

「俺はすずの名前、知ってる」

「いやいや、私は知らないわよ!」


 そこで男の子は気付いたようだ。


「そうか。覚えてないなら名乗らないとな。俺はラキュアリヤ・マギュバルザ」

「……」


 ――今なんと言いました?



 カタカナニガテデス。



「……ごめん、もう一回言ってもらっていい?」


 今でも無理なのに、そりゃあ5歳児ではこんな名前は覚えれないわ。


「ラクアでいいぞ。皆俺のことをそう呼ぶ」


 容姿と名前から、ラクアは外人なのだろうか。だが金色の目の外国人なんて聞いたことがない。


「ラクアってどこの出身なの?」

「俺か? リュエリカ534銀河系10874の惑星ヴィーランだ」

「……」


 ――聞いた私が間違ってたわ。



 どうもラクアは地球人じゃないらしい。




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