盾師ハーデス
カートン怪
第1話 盾師ハーデスは冒険者になる
ハーデスは
老婆のことやハーデスの両親のことを聞いても何も答えてくれなかった。耳も遠かったし
老婆ひとり子供ひとりでとにかく
十二歳のある夏の日、朝起きても老婆の姿がなく、昼をすぎても起きて来なかった。さすがにおかしいと思って寝室に行くと老婆は冷たくなっていた。人ってあっけなく死ぬものだと思った。そしてハーデスは
村長に老婆が死んだと報告すると埋葬を引き受けてくれた。改めてハーデスの家族のことを聞いてみたが村長も何も知らなかった。ハーデスはいつからか大きくなったら街に出て冒険者になろうと思っていた。
村の住民は主に耕作か狩猟で生計を立てていたが、この辺りは土地が痩せ狩りの獲物も少なかった。村の子供たちは誰しも大人になって村を出て行くことを夢みていた。この村には絶望しかなかった。
村長に村から出て行くと告げたが特に何も聞いてこなかった。誰もがハーデスに興味ないのだろう。ハーデスも別れを告げるべき相手を思いつかなかった。それよりも街での新しい生活に思いを
ハーデスは
首都イルベートは高い城壁に囲まれている。大きな門には守衛が居て来訪者を調べている。持ち物検査を受け、冒険者になるために来たと申告すると、ギルドの場所を教えてくれて、必ず冒険者登録するように念押しされた。今は仮に入場が許されているが、冒険者登録とか住民登録とか身分証を持たない場合は
入場してその足でギルドに向かった。守衛に聞いたとおり大教会を通りすぎて、少し先にギルドはあった。
ハーデスは
受付に冒険者登録をお願いすると、水晶に手をのせるように言われた。水晶はぼんやりと水色に
「おめでとうございます。水の魔力の
受付の人が言った。魔力を持っている人は百人にひとりで攻撃魔法を使えるのはさらにその中から百人にひとりで、つまり一万人にひとりということだ。思わぬ事にハーデスはこれからの冒険者生活に期待はさらに膨らんだ。
冒険者の登録が終わり冒険者証が発行された。ハーデスは大事に
冒険者にはランクがEからSまであり、Eは見習い、Dは初心者、Cで一人前、Bは上級者、Aは英雄級、Sは伝説級だ。
依頼には掲示型と常設型があり、掲示型は受付奥の掲示板に張り出されていて、珍しい依頼や報酬の良い掘り出し物とかもあるとのこと。常設型は薬草や鉱物の採取や魔物の討伐がある。依頼達成によるギルドへの貢献によってランクがアップするそうだ。なお税金は報酬からすでに引かれていて、冒険者はそれ以外の税金を取られることはない。
奥の掲示板の前に立ち良い依頼がないか探してみた。
・・・ハーデスは文字が読めなかった。
ふと気がつくと隣に人が立っていた。チラッと見るとハーデスと同じ年頃の女の子だった。熱心に依頼を見ているみたいだ。真剣な顔で見つめている瞳はとても
「良い依頼はあったかい?」
ハーデスは反射的に声をかけていた。
「ふふふ、とっても良い依頼を見つけたんだけど字が読めないんだ。」
ズッコケた。あやうく惑星の反対まで突き抜けるとこだった。
「・・・そうか、読めるようになったら教えてくれ。」
「冗談よぉ、もしよかったら一緒に探して。」
あまりの可愛らしさにドキッとした。
「俺も字が読めないんだよ・・・」
ハーデスはどうひいき目に見ても育ちが良いようには見えないが、女の子は身なりも整っていて悪くなさそうではあった。
「一緒に魔物狩りに行こうよ。」
一緒に行けたなら楽しいんじゃないかと思って思わず誘ってしまった。
「えっプロポーズ???」
驚く女の子。
「違うわい!?」
変な言葉になったよ・・・。
「いいよ。付き合って、あ・げ・る。」
なんか返事がおかしい気がするがまあいいか。
「ハーデスだ、よろしく。」
右手を差し出して言った。
「ヘルセポネよ。」
優しく握り返してくれた女の子の手はとても柔らかくて暖かかった。
こうしてハーデスは冒険者になった。この時に出会ったヘルセポネと
おわり
盾師ハーデス カートン怪 @toshi998
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