第6話
コスイベ当日。
奏多は新イベントであるレオンの黒色の衣装に身を包んで愛佳を待っていた。
腰の部分が露出していて流石に今回の新衣装はコスプレ出来ないかな…と思っていたが、ある日会社から帰ると愛佳がスマホ画面を見せながら『絶対この衣装着て!』と言ってきて、その迫力に断れずにゆっくり頷いたのであった。
更衣室で着替えていた時に琉斗がいないか探したが見つからなかったので、まだ会場に来ていないのかと思った。
「残念だな…」
ボソッと呟いてしまい、ハッと我に帰ると周りをキョロキョロ見回した。周りに聞いた人はいなくホッと息を吐いた。
「あ、お兄ちゃーん!!」
愛佳の声が聞こえて振り返ると、いつも通りラッキーの姿をした愛佳がいて奏多と目が合った瞬間、頬を赤らめて口元を押さえて悶え出した。
「ま、愛佳!?」
「お兄ちゃんの腰、えっちぃ…!」
「え、えっち!?って女の子がそんな言葉を言うんじゃない!!」
悶える愛佳を何とか落ち着かせると、とりあえず端の方へ向かい撮影の準備をし始めた。
愛佳に指示をされてポーズや表情を決めながら撮影をしていると、同じ狂恋のレイヤーさんに声をかけられて一緒に撮影をしたり、一般で参加している方に撮影されていた。
「本当、お兄ちゃんイケメンさーん!」
「そんな事ないよ、俺より…もっとイケメンがいるし…」
「ええ?お兄ちゃんもイケメンだよ!」
ムーっと頬を膨らませて怒った表情をする愛佳は、可愛さがあり奏多はほわわんと和んでしまっていた。
そこで奏多はある事に気づいた。
「そういや、愛佳ってあんまりこっち側にならないよな?俺ばっか撮っていないか?」
「え?だってお兄ちゃんのレオンがイケメンだし…」
「よければ俺も撮ろうか?」
手を差し伸べると愛佳はブンブンと音が鳴りそうなほど勢いよく首を横に振って持っていたカメラを胸に抱えた。
かなりの否定っぷりに少しの間、2人の間に沈黙が流れた。
「じゃあ愛佳は何でコスプレをしてるんだ?」
「そりゃあ…レオンの従者だから?」
「…俺は…ラッキー君姿の愛佳を撮りたいな…」
ジーッと見つめると愛佳の表情が崩れ出して、うーんと唸りながら考えだしたが顔を俯かせると少し経ってから顔を上げた。
「へ、変な顔でも許してね?」
「怒らないよ、ほら撮ろ」
奏多はニッコリ笑うと愛佳は持っていたカメラを下ろして、隣同士に立ちスマホで自撮り写真を撮り始めた。
楽しさに笑っていると、周りがザワっと騒ついたのに気づいた。
「あ、もしかして…!」
愛佳が奏多から離れてキョロキョロと見回し出して、奏多も同じ様に周りを見回した。
そこに現れたのは新しい黒色の衣装に身を包んだマルスがいて、後ろにはリリィもいてすぐに琉斗とゆいだと分かった。
かなりのイケメンっぷりに奏多はうわぁー!!と心の中で叫びドキドキしながら琉斗を見ていた。
するとバッチリ目が合ってしまい、琉斗はズンズンと勢いよく近づいてきて奏多の前でピタリと止まった。
「奏多さん、遅れてすみません…」
「え、い、いや…大丈夫だよ…」
「どうですか?今回の衣装…ゆいと頑張って作ってみました」
そう言ってクルリと一回転をし、腰が見えており胸元もはだけていてドキドキしてしまい目線を逸らしてしまった。
「…奏多さん。どうしました?」
逸らされた事に気づいた琉斗が顔を近づけてきて、奏多は顔を逸らして逃れようとしたが…追い込まれてしまい、どうにかしようと悩んでいるといきなり胸ぐらを掴まれた。
いきなりの事で驚き琉斗を見た瞬間、琉斗が口を開いた。
「レオン、お前の出番は無いみたいだ…残念だったな…」
琉斗の言葉に奏多はすぐにイベントのマルスの台詞だと思い出すと、表情を決めてから琉斗の胸ぐらを掴んで自分の方に寄せた。
「悪いが出番を無くすのはお前だよ、マルス」
レオンの台詞で返すと愛佳とゆいがすぐにカメラを構えて色んな角度から撮り始めて、奏多はどうしようか悩んだが至近距離の琉斗にドキドキしてしまったが…表情を何とか耐え続けた。
「めちゃくちゃかっこいい…!再現ポーズ最高…!」
悶えながらボソッと呟く愛佳の声でハッと我に帰り、奏多はパッと手を離して相手から離れようとした…だが、その前に琉斗の腕が背中に伸びてきてギューっと抱きしめられてしまい、周りから黄色い悲鳴が少し上がってしまった。
「ちょ、琉斗さん!?」
「可愛い…奏多さん…」
ボソッと耳元で囁かれた言葉に奏多の顔は真っ赤になってしまい、どうにかして離そうとした瞬間、誰かが琉斗の頭を叩いて無理矢理引き剥がした。
相手を見るとそれはゆいだった。
「あ、ご、ごめんなさい!奏多さん!琉斗がいきなり変な事をして…!」
勢いよく頭を下げてくるゆいに奏多は急いで顔を上げさせて、ニッコリ笑顔で伝えた。
「大丈夫ですよ、少し驚いただけですから」
「何かされませんでしたか?」
「だ、大丈夫だよ!本当に!!」
顔をブンブン横に振って否定していると、ゆいはホッと息を吐いてからしゃがみ込んでいる琉斗に近付き同じくしゃがみ込んで顔を近付けてから小声で喋った。
「言っただろ、コスイベでそういう密着は禁止。周りの迷惑だ」
「……今のは奏多さんが悪い、可愛かったし、至近距離だったし、キスしかけた…」
「やめろ、バカ!」
「あのー、二人とも」
声をかけられて振り返ると愛佳が立っていて「撮影しませんか?」と言われて2人は立ち上がるときちんと整えてから、撮影を楽しんだのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます