サピエンス科学(Sapiens Science)

日南田 ウヲ

第1話 はじめに




——随筆(エッセイ)と言うのは不思議だ。



 意図せず呟く独り言のように脳裏に思い浮かぶことを唯々自由気ままに書いてゆけば、やがて自然と文体に勢いや流れが出てしまい、思慮浅はかな自分自身はそれら一切を制御できず、やがて書き連ねる文字の筆先できっと見事に転んでしまうだろう。


 然しながらその一方で注意深く思慮を重ねてそれらを制御し、自由な発想で色んな物事を取り捨てゆけば、これ以上無い我儘で清濁余りある愉悦さを書き終えた自分自身に堪能させてくれる。


 これらが意味することは随筆(エッセイ)を書くというのは知的興奮を生み出す麻薬を作り出す作業なのではないか、という事だ。


 つまり随筆家(エッセイスト)はその作業によって純度の極めて高い知的香を嗅ぎ吸い、知的喪失による転倒やこの上ない愉悦の味わいを体験できる。


 この考えは強い独自性の随筆(エッセイ)に対する斜視的感覚による気分論だが、どうだろ。

 

 勿論、ひとつ付け加えたいのは全ての随筆家(エッセイスト)がそうした麻薬常習と言いたい訳ではないし、あくまで随筆(エッセイ)を書くという経験の心理的内面に於いていかがだろうかと付け加えたい。

 

 兎に角にもそんな麻薬患者であるからこそ、ある種の無理難題を主題に選んでも自由に我儘気ままに随筆(エッセイ)を書けると思ったのだ。

 

 それは何を主題にか?


 つまり

 ——サピエンス科学(Sapiens Science)についてである。






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