人気作者3名による特別座談会|カクヨムでの「収益化」の最前線を知ろう!(後編)

本座談会は2022年11月5日に「カクヨムからのお知らせ」で掲載しました。


【限定近況ノートで、読者型編集者に先行して読んでもらう】


――サポパスで作者のサポーターだけが読める「限定近況ノート」について、どんな内容をどれくらいのペースで投稿されていますか?


じゃがバター:新機能ですし、使えるものは使ってみよう、が出だしでしたね。最初は大したことを書いてなかったんですけど、ギフトを継続的にくださる方がいらっしゃることもあって、もう少しなにか活用したいかなと思いました。3カ月目からは換金したリワードをなにに使ったかというような報告を書いたり。実際に今年の春に京都旅行へ行ったので、それを活動報告で報告しました。大体食べるか旅行かになっちゃうんですけど(笑)。それと、実は推敲もなにもまだしていないダンジョンものを書いたりしています。「続けてください」とか「嬉しい」とか反応をいただけるんですが、私がまだその作品の存在をオープンにしていないので、みなさん黙って秘密にしてくださっています。ただ、ここで言っちゃったので、もう少しちゃんとしないとなと(笑)。もちろんある程度溜まったら、整合性を取った形で表でもアップしようかなとも思っています。実際、表に出すときには主役を変えてみたりだとか、そういったことはするかもしれませんけど。


百均:連載作品の先行公開をしています。元々、作品を一章分書き溜めてから一気に投稿するスタイルでやってたんですけど、書いている間に「これは面白いのか?」って不安になるんですよね。それを“口の固い”読者――言わば読者型編集者の方に先行して読んでいただいて、反応が見たいなと前々から思っていたんですよ。そこに限定近況ノートのサービスが始まって、これだ、と。投稿ペースはまちまちです。書き上がった分を投稿することになるので、調子がよければ月に数回。体調を崩すと月に1回も……ということもあります。


――サポパス開始日に、「サポーター向け限定コンテンツについて」(https://kakuyomu.jp/users/hyakkin/news/16816927860859165472)という近況ノートを書かれていましたよね。先行公開のような使い方はカクヨム運営も想定していませんでした。実は百均さんは贈られているギフト数がカクヨム内でナンバーワンなんです。累計でも1位ですが、2月から9か月連続で毎月1位でもあります。サポーター数も最大です。


百均:完全に偶然です(笑)。一章書き溜め型だったことがサポパスのシステムと上手く合致したのかなと。受けが悪いなーとか、あ、こんなふうに思うんだとか、そういった反応を見て修正したり。一般公開してしまうともう大きな修正はできませんから。


じゃがバター:完全に表に出す前に「ここおかしいよ」とか教えていただければもう少し修正したりもできるので、確かにいいですね。


百均:少しでも先に読みたいということもありますけど、限定近況ノートに書いているものは俗に云う試作品的なもので、荒削りなものであることは公表した上でのものなので、一般公開されたものと見比べたりする方もいるみたいです。


――コミック誌の連載と単行本の違いをチェックするようなコアな感じですね。一般公開と限定近況ノート、表と裏の使い方の塩梅のよさがあればこそですね。実際、ウェブ媒体で活動されている作家さんはユーザーさんとのコミュニケーションがお上手です。富士田さんはいかがでしょうか。


富士田:僕はとりあえずなにかやってみようという感じでした。書いている小説の短編だったり、公開するほどじゃないかなという程度の、ある物語を補完するようなお話を投稿することが多いですね。それがなくても物語の進行には問題ありませんし、「細かく知りたい人はサポパスに入ってください」みたいな感じです。


――サポーターは人気作品の『カルマの塔』の読者だけではなく、他の作品や富士田さんご自身のファンも多いのでしょうか?


富士田:そうですね。そうじゃないと1回見てやめちゃうと思うので。打算的なことを言えば、そうしたファンの方々を得られる作家になることを狙ってはいたんですよ。当時、異世界転生が流行っていて、テンプレートにどれだけ奇抜な設定をねじ込めるかの大喜利勝負になっていたんです。そこで戦えないからこそ、できる限りオンリーワンを狙って、少ないパイを狙って逃さないように心がけました。オンリーワン路線は間違ってなかったと思いますし、「してやったり」なところはありますね(笑)。


トリの最新調査

ギフトは贈るのも、贈られるのも格別な体験。作者のみんなは「限定近況ノート」を書いて、サポーターを募るのもいいかも。

◆サポパス会員数の推移

◆左:作者が受け取っているギフト数の分布/右:サポーター1名あたりの平均ギフト数の分布


【読者の少ない労力で、作家側に大きな還元ができる】


――皆さまは書籍化を経験されていますが、書籍とカクヨムでファンとの距離感の違いを感じることはありますか?


じゃがバター:書籍に対しても感想やコメントをいただく機会はあるんですけれども、出版社気付で編集さんを通してお手紙をいただくよりも、カクヨムの方がお気軽に送っていただけるのかなと。メッセージは他の人からは見えない個人的なものですし、匿名でやりとりするより、距離感は近く感じられますね。それにメッセージは、読み返したいときすぐ読めるのも魅力です。


百均:書籍はちょっと距離が遠いですよね。ファンレターが届くわけでもないですし、最終的に売れた冊数も、我々の耳には届かないので。カクヨムは身近なだけに現状の読者の数や声がダイレクトで届く感じです。


富士田:僕は百均さんほどの書籍経験があるわけではないですけど、同じ意見ですね。カクヨムはユーザーさんと作家の距離が近いですよね。それは間違いなくモチベに繋がっています。


――小説書籍やコミックは1冊ごとに決められた額で購入しますが、サポパスは読者の裁量でギフトを贈る個数が決められるので、本1冊以上の額が贈られることもあります。


富士田:サポパスのギフトは本の印税と比べると、作者の手元に入る割合が、断然大きいですよね。読者が贈ってくださるギフトひとつで、単行本1冊くらいの売上が還元されていますから。


じゃがバター:書籍は買っていただいた方がなにかしらの発信をしてくださらない限りお顔が見えない部分があって。もちろん、ありがとうございますなんですけれども、ギフトの場合はユーザーネームでその方だと分かりますし、毎月サポーターを更新してくださっていることで読んでくださっているんだなと分かりますから。お顔が見えますし、安心できる感はあります。


――安心、自信というキーワードが座談会を通して頻出しますね。ちなみに、ギフトを贈られることで、作者側がプレッシャーに感じることはあるんでしょうか?


じゃがバター:たくさんギフトをいただくと「あっ、限定近況ノート更新しなきゃ!」とはなりますけど、それもまたいい刺激ですね。基本的には本編の更新優先ではあるんですけれども、パスポート更新の時期はいただくギフトの数が増えることがあるので、これまた限定近況ノートの更新を焦ります(笑)。いそがしいと時期がズレちゃったりするんですけども。サポーターさんの数がいきなり大きく減ってしまうようなことがあればプレッシャーになったのかなと思います。でも、気負わずに書き続けていることを応援してくださる方が一定数いてくださりますし、それを自分の目で確認できていることが安心感に繋がっているのかなと。無料だからと読み捨てられるんじゃなく、追い続けて推し続けていただけているのは本当にうれしいですね。


――書籍の場合、人気の出そうな作品はおのずと方向が定まる傾向もあります。でも、読者が読みたい作品は様々だと思いますし、そうあるべきだと思っています。書籍として結果が出なかったとしても、サポパスのような別の形で作品と作家さんをサポートできる体制をカクヨム運営は目指しています。書籍が持つ弱点をカクヨムが補強して次に繋げて、それをまた書籍に還元できるような新しいサイクルです。


百均:続刊が出せないと、がくんとモチベーションが下がるんですよ。「おまえの本は買うに値しないんだよ」と突きつけられるわけですから。そのポッキリ折れた自信をギフトが補強してくれる感はありますよね。


富士田:百均さんとまったく同じですね。作業中に聞いて、ガクンと……。実際、そのときは自分の作品が嫌いになっちゃったんですよ。こいつはダメな子だって。でもロイヤルティプログラムのおかげで、ダメな子だと思っていた作品がお金を生んでくれて、ギリギリ嫌いにならずに済みました。なかったら筆を折ってた――かは分からないですけど、少なくとも今のような自分にはなれていなかったですね。


じゃがバター:私の場合、幸い2作を書籍化していただいておりまして、どちらも巻数を重ねさせていただいていて本当にありがたいことなんですけれども、「他の作品はどうなんだろう?」「どこまで書き続けられるんだろう?」「書いている間に読者の方が離れてしまったらどうしよう?」という不安はどうしてもありますね。それでも、これからもずっと書き続けたいと思っているので、ロイヤルティプログラムという書籍化以外の収入システムを備えたカクヨムが、より安定した環境を作ってくださるとありがたいです。


――今後、カクヨムに期待すること。それから、ご自身の展望をお聞かせください。


富士田:あまり思いつかないんですが、他サイトさんを抜いてカクヨムさんがメインストリームになって、読者さんがもっと増えてくれたらいいなと。作家さんにせよ、読者さんにせよ、そのサイトを選ぶか選ばないかの基準は「一番か、それ以外か」だと思うので、こうしたマネタイズができるサイトが一番を取ってくれたら、僕ら作家もありがたいかなと。もちろん僕もカクヨムに読者さんを供給できるよう頑張らないといけませんけど。展望としては、そろそろ過去の遺産で食っていくのもちょっと恥ずかしいので。読者さんがついてくれる新作を書いて、細く長く食べていけたらなと。それをするために、この作家のなら間違いないだろうという信頼を作りたいところですね。それができて実際に食べていけるようになれば、書籍化していなくともプロとしてやれていると胸を張って言えるようになれるかなと思っています。


百均:展望は……とりあえず作品を完成させたいですね(笑)。あとはもっと固定の読者を作れたらいいなというのが個人的な目標です。カクヨムに期待するところは富士田さんと被るんですけど、カクヨムさんがウェブ小説のメインストリームになってくれるとうれしいですね。


じゃがバター:いろいろお話を伺って、まずはこれまでしていなかったことを試してみたいなという感じではあります。カクヨムで書いたり、ネットでなにかを発信すると、収益が得られるだけじゃなくて、それによって反応が返ってくることが嬉しいんです。だから、カクヨムがびっくりするほど進化するよりも、この場を安定持続していただけるとありがたいですね。


――座談会にご協力いただきました、じゃがバターさん、百均さん、富士田けやきさん、あらためましてありがとうございました。

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