第5話 幼馴染ちゃんと謎のイケメン君

朝早くからお弁当を作るのは思ったよりしんどいことがわかりました。

次回からは前日にしっかり準備します。多分。


なぜお弁当の話をしているかというと、今日は45分授業なのですが6限まであるのでお弁当が必要だったのです。といっても今日は金曜日。今日が終われば休みです!


中学生の時もそうなんですけど、45分授業って5分短いだけなのに気分的にかなり短く感じるのは僕だけではないはず。


「陽葵君じゃないか!おはよう!・・・ちょっと眠そうだけど大丈夫か?」

「ああ、蘭さん。おはようございます・・・ちょっとお弁当を作るために早起きしすぎちゃって・・・ふぁああぁ・・・眠いです・・・」


ううう、恥ずかしい姿を見られてしまいました。


「あらら・・・まあ今日はオリエンテーションだからセーフじゃないか。

というか、君は自分で弁当を作っているのか?」

「はい。親の弁当の詰め方が気に入らないので。」

「・・・理由がどうであれ、自分で弁当を作るなんてすごいな。」


まあ頑張ってはいますけど、すごいって程じゃないと思います。


「あ~!陽葵君だ~~!」


この声は・・・小鳥遊たかなし莉心りこさん?

莉心さんは幼稚園からの幼馴染なのですが、中学受験をしたのでどこの高校に入ったのかとかは知らなかったんですよね。


「ん?」

「あれ?莉心さん?ここの高校だったんですか?」

「そうだよ~?なんなら同じクラスだよ~」


えええええ!?ま、まったく気づきませんでした・・・


「えぇ!?き、気づきませんでした・・・」

「だよねぇ~。全然こっち見ないな~って思ってたし。」

「それで・・・あなたも、確かクラスメイトだよね~?」


蘭さんの方を見て尋ねる莉心さん。

すごいな、クラスメイトの顔もう覚えてるんだ。


「ああ。神林蘭だ。よろしく。え~っと・・・小鳥遊さん?」

「莉心でいいよぉ~。私も蘭ちゃんって呼んでいい?」

「あ、ああ・・・大丈夫だ。」

「ありがとう~」


な、なんかやり取りにやけに緊張感あるなんですけどぉ・・・!

え、なんかラブコメ系ラノベの今カノと元カノがたまたま居合わせたときの緊張感に似ている気がします・・・!


「・・・それでさ~蘭ちゃん!陽葵君くん!」

「な、なんだ?」

「どうしました?」

「今日って教科書いらないよね~!?」


教科書は・・・いらないという連絡がありました。


「は?・・・い、いらないはずだが。」

「今日はなくていいはずですよ」

「そうだよね!?よかった~!」


涙目でめちゃくちゃ安心している莉心さん


「・・・・・・」

信じられないという顔でこっちを見てくる蘭さん。

そうなんです・・・この人、思ったより天然ポンコツなんですよ。


まだ呆然とした顔の蘭さんと一緒に学校に向かうのでした。




・・・


その日の昼休み


「すまん。神戸陽葵ってのはアンタか?」

「・・・はい。そうです。どうしましたか?」


謎の高身長イケメンに呼ばれました。

身長は蘭さんと同じかそれ以上で推定185㎝前後。肌は少し黒いが日焼けの黒さではない。身長や筋肉のつき方等からして恐らくバスケ部。


恐らく初対面。

バスケとは縁が無いはずの僕の名前をなぜ知っているのか不思議ですねぇ。


「あ~その、なんだ。俺の話しかけ方が悪かった。初対面の人に、なんて声かけていいかわからなくてさ。警戒されるのもわかるんだが、怪しいものじゃない。いや、これ怪しい奴が言うセリフか・・・?」


・・・思ったより悪い人じゃなさそうです。


「3つほど質問いいですか?」

「お、おう。俺に答えられるなら。」


ちゃんと予防線張ってきますねぇ・・・


「じゃあまず1つ目。あなたの名前は?」

「え?・・・あ!俺名前いってなかった!俺は宝町たかまち宗弐そうすけ。宝の町って書いて『たかまち』、宗教の宗に難しい方の弐で『そうすけ』だ。読みにくいのは勘弁してほしい。」

「・・・わかりました。」


う~んおかしいですねぇ・・・この人なぜか既視感が・・・

最近、具体的には今日の朝登校中に会ったような・・・


「では2つ目。なぜ僕に名前を知ってるんですか?」

「まずはクラスメイトだからだな。難読名前の持ち主として陽に葵でなんて読むのか興味を持ったんだ。」

「それは・・・お互い苦労しますね。」


・・・やっぱり既視感ありますね!?なんならクラスメイトの下り今朝一回しましたよね!

蘭さんのことで頭がいっぱいでまだまだ覚えられてないんですよね・・・

うう、これはよくないです。


「では最後に。あなたの目的は、僕を害そうとすることですか?」

「っ!?」


お、反応しましたね・・・ただ、そういう目論見がバレた時、基本的に人は『悔しい』という感情を持つことが多いのですが、今回は感じません。


莉心さんの面影すら感じるポンコツさを持つ彼が僕相手にそれを隠せるとは思えません。ということは、『あくまで可能性として視野に入ってはいたけど、相手がそれに気づいていることに驚いた』といった感じでしょうか。


ということは、次の相手の回答は―――『返答や目的によっては』といったところでしょうか。


「アンタの、蘭に近づいた目的による」


・・・ん?ん?少々予想外の言葉が出てきましたね?

『目的による』という部分は僕の予想と一緒です。一緒なんですが・・・蘭さんに近づいた?え?そこ?


「え~っと・・・あなたのおっしゃる蘭、という方は僕たちと同じクラスの神林蘭さんのことでよろしいですか?」

「ああ。そうだ。」

「に近づいた目的、ですか?」

「変なこと聞いて悪いな。でも・・・アイツのだとしたら・・・アンタを蘭には近づかせない。」





・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・う~ん、ちょっと。


新情報が多すぎて頭が追いつきません。誰か助けて。


―――――――――――――――――――――――――――




今日は金曜日だ!


明日が休みなのは素直に嬉しいが、今日を逃すと二日間は陽葵君と直接お話しできなくなってしまう。だから今日はできるだけたくさん陽葵君とお話しするぞ!そして休日LIMEの話題を探すんだ!


・・・あれ?もしかして私の動機キモい?

まあいい。陽葵君にさえバレなければいい話だ。


ん?あれは・・・もしかして陽葵君じゃないか!?

朝から会えるなんてラッキーだ!


「陽葵君じゃないか!おはよう!・・・ちょっと眠そうだけど大丈夫か?」


ちょっとどころか明らか眠そうなんだが?どうしたんだろう・・・目は腫れてないし隈もないから、泣きながら寝たわけではない事と、継続的な寝不足じゃないことはわかるんだが・・・ちょっと心配だなぁ。


「ああ、蘭さん。おはようございます・・・ちょっとお弁当を作るために早起きしすぎちゃって・・・ふぁああぁ・・・眠いです・・・」


うわあああああああぁぁぁ陽葵君の生あくびだぁぁぁぁ!!

かわいいいいいいいいいいい!!


てか眠気ボイスが神過ぎるんだが!?ただでさえふんわりしたかわいい声の陽葵君の眠気ボイスってもう、なんか、ふわふわ過ぎてヤバイ。好きすぎてキュン死する。これもはや有料級だろいくら払ったら聞かせてくれるんだ。


なんて叫びだしたいが務めて冷静に返事する。


というか陽葵君ってお弁当自分で作ってるのか!?

その女子力(というか家事力?)ちょっとでいいから分けてくれ。


「あらら・・・まあ今日はオリエンテーションだからセーフじゃないか。

というか、君は自分で弁当を作っているのか?」

「はい。親の弁当の詰め方が気に入らないので。」


なんか、私が考えた理由って『好きなおかずを入れれるから』とかだと思ってたんだけど、詰め方が気に入らない・・・なかなか聞かないぞ?


ちょっと揺れただけで弁当が崩れた、ってキレてたやつはいたような。

あれが嫌なのかな?


「・・・理由がどうであれ、自分で弁当を作るなんてすごいな。」


私は到底できそうにない。


「あ~!陽葵君だ~~!」

「ん?」


なんだあの陽葵君よりちっちゃくてふわふわの女の子は。かわいいな。

じゃなくて!今さっきあの子『陽葵君』っていってたよな?


私以外に陽葵君のことを名前呼びする女がいるとは聞いてないぞ!


「あれ?莉心さん?ここの高校だったんですか?」


莉心さん!?え、陽葵君の知り合い!?

あ、中学が同じとか?それならまぁ・・・あり得るか。複雑だが。


「そうだよ~?なんなら同じクラスだよ~」


なにいいいいい!?同じクラス!?ちょっと話が変わってくるぞ!?

雰囲気的に恋敵になる可能性もあるわけだろ!?ちょっと私こんな子と正面切って喧嘩なんてできないぞ!?かわいすぎて!


「えぇ!?き、気づきませんでした・・・」

「だよねぇ~。全然こっち見ないな~って思ってたし。」


あれ?君は知り合いのはずだよね?なんで気づいてないのよ。

・・・もしかして私のこと考えてたとか!?・・・ないか。


「それで・・・あなたも、確かクラスメイトだよね~?」


ほう、もう私の名前と顔を覚えているのか。

って席が陽葵君の一個前だもんな。そんなもんか。


ちなみに私も彼女の名前は覚えている。なぜって?『小鳥が遊ぶ!?なんて読むんだこれ!?』ってなって調べたからだ。


「ああ。神林蘭だ。よろしく。え~っと・・・小鳥遊たかなしさん?」

「莉心でいいよぉ~。私も蘭ちゃんって呼んでいい?」


この距離の詰め方・・・まさかあざとい系か?なら私も手加減しないが。


「あ、ああ・・・大丈夫だ。」

「ありがとう~」


いや、私に対して警戒はしてるが敵対心は感じないな。少なくとも私が見てきたあざとい女子ではない。

う~ん・・・ってそうか。彼女は私たちの出会いを知らないんだ。だから、彼女からしたらいきなり陽葵君と距離を詰めた女なわけだ。


・・・そんなの私の方がよっぽど怪しい女じゃないか!!

友達がそんなんならそりゃ警戒するわ。私でもする。


「・・・それでさ~蘭ちゃん!陽葵君くん!」

「な、なんだ?」

「どうしました?」

「今日って教科書いらないよね~!?」


ん?え~っと?ちょっと質問の意図がわからないんだが?

・・・いや、この表情からして本気で聞いてる?


「は?・・・い、いらないはずだが。」

「今日はなくていいはずですよ」

「そうだよね!?よかった~!」


涙目でめちゃくちゃ安心している莉心ちゃん。

・・・え?この子もしかして天然属性も入ってるの?


「・・・・・・」


陽葵君に確認の意味を込めて視線を送ったら、うなずかれた。


つまりちっちゃくてふわふわ天然美少女ってことか?

・・・なんだそれ最高かよ。この子は私が守る。





その日の昼休み。たまたま一人でいたところ、ある人に声をかけられた。


「あ~~!蘭ちゃんだ~~!」

「ん?お、莉心じゃないか。どうしたんだ?」

「え~っとね?今二人でお話しして大丈夫~?」


ほう・・・二人で、か。ということは、話題は1つしかない


「陽葵君について、か?」

「っ!?・・・・・・うん。」


やはりか。

幸いここはあまり人が通らない階段の踊り場で今は昼休み。密会には最適のコンディションといえるだろう。


「わかった。私は腹の探り合いが苦手でね。単刀直入に聞こう。まず、君は私を警戒してると思うんだが、それは何故だ?ああ、警戒するなと言ってるわけじゃないんだ。だが・・・君のような純粋な子がするということは、何か強い理由があるんじゃないかと思ってね。具体的には彼の過去に。」


これが私の唯一の疑問だ。あの後陽葵君とちょっと話したのだが、この子は心配になるくらい天然らしい。朝に実感した。だから何故明確な警戒心を私に向けるのか気になった。


そして、そんな子が私に慣れない警戒心を向けるということは過去に陽葵君が傷ついたことがあったんじゃないか、と私は推測した。


それを聞いた彼女は眼を真ん丸にして驚き、


「すごいね・・・そこまでわかってるんだ・・・」


といった後。


「あなたは、陽葵君の何に魅力を感じて近づいたの?」


・・・


・・・・・・ん?それは私をこの場で公開死刑に処すということか?


「反応を見たくて、陽葵君をからかって虐めるためなの!?」


からかう?虐める?なぜそんな話に?


「ちょ、ちょっとま―――」

「陽葵君にあんなにデレデレしてるのはなんで!!??」

「~~~~~っ!!!!!????」


2つ、分かったことがある。


1つ目は、私はこの状況を理解できる頭を持ってない。


2つ目は・・・





恋心が他人にバレるのは、死ぬほど恥ずかしい。


ちょっと死んでくる。


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