裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? ~一気にレベルアップして無双します!~
第八十三話 人知れずダンジョン制覇者兼、英雄になりて
第八十三話 人知れずダンジョン制覇者兼、英雄になりて
人知れずダンジョンの危機を救い、誰も知らないダンジョン制覇者兼、英雄になってから三週間が経過した。
一度入ったら脱出不可能と言われる虚像空間のある《モノキュリー》だが、一度実像世界に入ればちゃんと出口は用意されていたようで、
なにせ、ダンジョン全体に激しい揺れや落盤、モンスターの狂暴化、弱体化など様々な異常が観測され、冒険者は次々とダンジョン攻略を切り上げて逃げ帰ってきていたらしい。
民衆はその対応に追われ、話題もその異常事態でもちきり。
怪我の功名と言うべきだろうか、当事者である僕達はその喧噪に隠れるようにしてダンジョンを後にしたのだった。
それから今日までの三週間、これといって槍玉に挙げられることはなかった。
まあ、事の真相を知っている人は僕達以外いないのだから当然だろう。
人の噂も七十五日。まあ、厳密には二十日とちょっとしか経っていないが、原因不明の異常ということで、話題も徐々になりをひそめていった。
崩壊のエネルギーがクレアを中心に放たれていたため、震源となった《モノキュリー》の被害に比べ、他のダンジョンの被害は比較的小さく収まったらしい。
今回の騒動の犠牲になったとされる人の死傷者数は、わかっているだけで死者32名、重軽傷者144名と、予想より遙かに少ない数字だった。
ダンジョン攻略は常に危険が伴う。
故に、今回の騒動で飛び抜けて犠牲者が出たとは考えにくいというのも、話題が廃れていくのに一躍買っていた。
『――ま、そんなわけで、めでたしめでたしだな』
「いや勝手に大団円にまとめないでくれ。あと、ソファに寝転がったまま食事禁止!」
カラール村の自宅にて。
どこからともなく持ち込んできたソファに寝っ転がりながら、
ヤワイモを薄くスライスしたものを、コン油で揚げて作ったおやつを囓る音が、室内に響き渡る。
『えぇ~いいだろうケチ。俺とお前の仲じゃないか』
「さらっと幼なじみ的設定に変更しない! つい三週間前まで殺し合ってた仲でしょうが!!」
昨日の敵は今日の友を地で行く
まさかダンジョン全てを破壊せしめようとした男と打ち解けるとは思っていなかったが、今はお互いに気を許している状態である。
ふと、玄関の扉が開き外の明かりが差し込む。
光の向こうからは、二つの人影が現れた。
「また喧嘩してるの? 相変わらず仲がいいわね」
「むぅ~、エランくんの隣は、私の特等席なのに!」
微笑むエナの横で、頬を膨らませるクレア。
「別にお前の特等席じゃないから」
「え~、いいじゃん!!」
「よくない。まあ、隣にくるくらいならいいけ――」
「やったぁ!」
言い切る前に、クレアは飛びついてくる。
エナと共に村の畑仕事の手伝いをしていたからだろう。土の香りが、強く鼻腔をくすぐった。
ダンジョンから戻ってから二日後に、クレアは目を覚ました。
体調は特に問題ないらしく、僕が知っているクレアのままでいてくれて、心底安心したものだ。
「それでエランくん。冒険は、いつから再開するつもりなの?」
とーめちゃんを抱えたエナが、そう聞いてくる。
「近いうちには、またダンジョンに潜ろうと思ってる。もっとも、また《モノキュリー》に行くのはごめんだけど」
あのときは、クレアの内包する崩壊のエネルギーが溢れ出したお陰で、虚像空間が崩壊してくれた。
だが、今度はそうも行かない。
「それもそうね」
エナははにかみながら答える。
腕に抱えられたとーめちゃんも、賛同するように『きゅう』と鳴いた。
「そういえば、随分懐いてるよね。《魔除けのブレスレット》も持ってないのに」
「え?」
言われて今気付いたらしい。
エナは、とーめちゃんの方を見る。
「クリアスライムではないけれど……昔モンスターを飼っていたからかしら」
「なるほど。ペットの扱いはお手の物というわけね」
『ハッ。なーにがペットの扱いは完璧、よ。低クラスモンスターの餌付けなんざ、この
がぶっ!
『ぎゃぁああああああ!』
刹那、
とーめちゃんが、彼の腕に齧り付いたからだ。
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