第八十話 報復に対する報復を
「何が起きたのか……その答え合わせをしましょうか」
僕は右手を空に掲げる。
今にも崩壊しそうな空に手を伸ばし、手に入れたユニークスキルを起動した。
「ユニークスキル《
すると、掲げた掌の上に青紫色の光球が浮かび上がる。
そこでようやく、《
『な、まさか……《
「正解。だけどそれだけで終わらせる気はない。報復対象を再設定、“ダンジョン世界”から“
『な……なぁ!?」
「――というのは冗談で、報復対象を“崩壊するダンジョン世界”へ変更」
青ざめる
『崩壊するダンジョン世界を対象に設定? 何を言ってるんだ、もう設定されてるものだろう……アホなのかお前は』
「はい? もう一度言って、《
『……』
黙りこくった
「僕が報復の……崩壊の対象に設定したのは“崩壊するダンジョン世界”。つまり、崩壊しゆくダンジョンを崩壊させること。マイナスとマイナスを掛け合わせたらプラスになるように、崩壊するダンジョンを崩壊で上書きしたら……?」
『崩壊するダンジョンという概念を崩壊させる……まさか!?』
すると、金色の渦を巻き、赤い稲妻と青白い亀裂で埋め尽くされた空が、極彩色を経由して暗雲立ちこめる雨の空へと移ろってゆく。
地上に溢れる高波はダンジョンの端へと寄って、中央を円形に切りとった、変な形の海を取り戻す。
砕け散った岩山の欠片も集まって、元の岩山がそびえ立った。
まるで、時間が遡っていくかのように。
ダンジョンの崩壊が、最初から無かったかのように。
『お前は、ダンジョンの崩壊という概念そのものを崩壊させることで、ダンジョンの崩壊を無かったことにしたというのか!』
「そういうこと」
言うなれば、崩壊に対する崩壊。報復に対する報復というわけだ。
答えながら、クレアの方を見る。
彼女にも感謝しなきゃいけない。
彼女には、
ダンジョンの崩壊を起こした張本人は
それに、彼女に《
もう一度大それた目標を崩壊させるだけのエネルギーがクレアに残っていたのも、幸いしたと言っていい。
「ありがとう、クレア」
そう告げて、パチンと指を鳴らす。
《
今、このときより復讐の
「おっと、危ない!」
大気を蹴り、慌ててクレアの方へ飛んでいく。
落下する彼女に追いつくと、お姫様抱っこをする形で抱きとめた。
どうやら意識を失ったままらしく、腕の中で小さく肩を上下させている。
「もう少しだけ我慢してくれ。すぐに決着つけるからさ」
優しく言葉を掛け、小さくて軽い彼女の身体を背中に背負う。
それから、未だ「信じられない」という顔で硬直している
「さーて、それじゃ真心込めてぶん殴るけど、覚悟はよろしい?」
『な……に?』
「なるほどよろしい。それじゃあ遠慮なく」
一度目を瞑って開き、次の瞬間思いっきり大気を蹴って、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます