第六十話 憤怒の灼熱地獄

「さて、どう料理しようか……」




 僕は、自身のステータスを確認してスキルを吟味ぎんみする。




◆◆◆◆◆◆




 エラン


 Lv 326 → 415


 HP 8750 → 10200


 MP 1490 → 1883/2010


 STR 1255 → 1460


 DEF 968 → 1090


 DEX 280 → 305


 AGI 319 → 340


 LUK 210 → 232




 スキル(通常)《衝撃拳フル・インパクト》 《サーチ》 《飛行フライト》 《ズーム》 《速度超過スピードアップ》 《標的誘導ターゲット・インデュース》 《超跳躍ハイ・ジャンプ》 《暗視ナイト・ビジョン》 《威嚇シャウト》 《衝撃波ソニック・ウェーブ》 《反発バックラッシュ》 《龍鱗ドラゴン・スケール》 《身体能力強化フィジカル・エンハンス》 New! 《遠隔操作リモート・コントロール》New! 


 スキル(魔法)《火炎弾フレイム・バレット》 《冷却波クール・ウェーブ》 《蒼放電ブルー・リリース》 《紅炎極砲フレア・カノン》 《上昇烈風ノックアップ・ゲイル》 《火炎付与フレア・エンチャント》 《閃光噴射フラッシュ・ジェット》 《積層土壁ラミネート・グランドウォール》 《氷柱雨撃アイシクル・レイン》 《灼熱伝導ヒート・コンダクション》 New!   


ユニークスキル 《交換リプレイス


アイテム 《HP回復ポーション》×128→139 《MP回復ポーション》×44 《状態異常無効化の巻物》×38→45 《魔鉱石・赤》×12 《魔鉱石・黄》×32 《魔鉱石・青》×65 《魔除けのブレスレット》×1 《ガントレット(左手)》×1 《攻略の証》×1 


 個人ランクS


 所属 《緑青の剣》(追放)




◆◆◆◆◆◆




「決まりだ」




 相手が水を操る敵だというのなら、こちらは炎を操る執行官になろう。




「スキル《火炎付与フレア・エンチャント》、《灼熱伝導ヒート・コンダクション》、多重付与マルチ・エンチャント!」




 《火炎付与フレア・エンチャント》。


 エナが愛用している、武器や物体に火炎属性を付与する魔法スキルだ。消費MPは一分間の付与エンチャントあたり、15である。




 水の天敵に当たる火炎属性をハイド・ウンディーネに付与すると、銀色の球体がボッと音を立てて燃えあがった。




 続いて、《灼熱伝導ヒート・コンダクション》――対象設定した物体に熱を加えるスキル・消費MPは35、をハイド・ウンディーネに付与する。




 すると、銀色の身体はまるで溶鉱炉に入れられた鉄のように真っ赤に輝きだした。


 《サーチ》を起動すると、12000あったハイド・ウンディーネのHPがゴリゴリ削られていくのがわかった。




 散々手こずらせてくれたんだ。


 この程度の地獄なんて、まだまだ生ぬるい。


 


 赫灼かくしゃくに燃えあがる球体を上空に放り投げ、ダメ押しとばかりに《紅炎極砲フレア・カノン》を起動。


 打ち上げられたハイド・ウンディーネめがけて巨大な炎の玉を撃ち放った。




 炎の玉は、燃えあがるハイド・ウンディーネにぶつかるや否や、たちまちそいつの全身を覆い尽くした。


 今、ハイド・ウンディーネは身体の内と外から超高温の炎で焼かれているのだ。




 《第三迷宮サード・ダンジョン》《トリアース》のラスボス戦で使用した、無属性の物理攻撃系統スキルを組み合わせた《衝撃拳フル・インパクト》――龍殺しドラゴン・キラー


 それと同じ事を、火炎魔法スキルの合わせ技で行ったのだ。




 名付けるとすれば――




火炎暴虐技フレア・アサルト灼熱地獄インフェルノッ!」




 対象を火達磨ひだるまにしたまま、炎の中に閉じ込める、地獄と呼ぶに相応しい必殺技だ。


 灼熱を放つ紅炎は、曇天で覆われた空を残酷なほどに明るく照らし出す。




 降りしきる雨が、太陽と化した炎の球体によって熱され、表面に触れる前に蒸発して行く。




「――お別れだ」




 ぼそりとそう呟いて、パチンと指を鳴らした。


 すると、燃えさかるハイド・ウンディーネを取り囲んでいた炎の塊が一気に収縮したかと思うと、轟音を上げて爆発四散した。




 火花が、流星のように弧を描いて落ちて行く。


 その中心にいたはずのハイド・ウンディーネは、超高温に熱されたせいでとっくに溶けてしまっていたらしい。




 今やその姿は、どこにも見受けられなかった。




「終わったみたいだ」




 僕は、小さく息を吐く。


 それから、エナ達のいる岩山の中腹へむかって、ゆっくりと降下していくのだった。




 そんな中、エナの側で倒れているウッズと目が合う。


 全ての人間を拒絶するような、冷たいアイスブルーの瞳が、まっすぐに僕を射貫いた。




 一体彼は、僕を見て何を思ったのだろう。


 これから、何を言うんだろう。




 お互いの関係はもう、「助けてくれてありがとう」とか「助けるのは当然」とか、そんなことを平然と言い合えるほど単純なものではなくなっているのだ。




 歪み歪んだお互いの感情が、この再開でどんな方向へねじれ、こじれてゆくのか――今の僕には、皆目見当も付かないのだった。

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