第五十四話 虚像の敵?
《エラン視点》
「ウッズ!」
憎き相手を見つけた僕は、声を上げる。
「リーダーがこの場所にいるの?」
「うん。ちょっとの間クレアととーめちゃんのこと頼んだよ!」
エナにクレアととーめちゃんを預けるや否や、スキル《
数百メートル先の崖っぷちで横たわるウッズめがけて、一直線に滑空する。
(ったく……こっちはクレアのことで忙しいのに、よりによって先にオマケの方が見つかるとはね)
手っ取り早く助けて、嫌味を言われる前に帰ればいいや。
一瞬で詰まる彼我の距離。
情けないリーダーの元までカッ飛んでいった僕は、素早くウッズとモンスターとの間に割り込む。
そして、スキル《
ザッと地面を踏み込み、正拳突きを放つ。
拳から放たれた衝撃波は、水の不死鳥を容易く吹き飛ばした。
「ば……かな!?」
後ろで、倒れているウッズが驚きの声を上げる。
(驚いてるな? つい半日前に追放した奴に、いきなり登場されて助けられるなんて、屈辱的だろ? 驚いたろ? 悔しいだろ)
おっといけない。
自分の中のブラックエランが出てしまうところだった。
「何をそんなに驚いてるんだい?」
「ど、どうしてテメェがここに?」
「え? 散歩だけど」
「ば、バカにするな! エランのくせに!」
「えぇ……」
理不尽だなこの野郎。まあ、バカにしたのは事実だけど。
心の中でそう付け加える。
「それよりテメェ、油断してんじゃねぇぞ!」
「え?」
「ソイツは何度でも蘇る不死鳥なんだぞ!」
「ご高説をどーも」
まったく。
ちゃっかりアドバイスをくれるいい先輩風になってるけど、根は真っ黒だってわかってるからな。
悟られないように歯を食いしばる。
と、消し飛ばしたはずの水滴がぐるりと輪を描きながら集まりだした。
集まった水滴は再び水の不死鳥を象り、襲いかかってくる。
(あー、本当に攻撃が効かないみたいだ)
この程度の脆さなら、仮にもウチのパーティの頭を張っていたウッズが倒せないはずもない。
なのに勝利していないということは、殆どの攻撃が効かないと思っておいて良いだろう。
「厄介だな!」
スキル《
襲いかかってきた水の不死鳥を隔離する。
行く手を阻まれ、動きが鈍った隙に《サーチ》を起動し、水の不死鳥を調べる。
弱点は実際にステータスを見て確認する。
基本中の基本だ。
だが。
「なっ!?」
《サーチ》を起動した僕は、思わず驚いてしまった。
確かに水の不死鳥に焦点を合わせているはず。
だというのに。
まるでそこには誰もいないとでも言うかのごとく、ステータスが全く表示されなかったのだ。
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