第六話 決着、跳蜂戦

『コンディション・エラー。《交換リプレイス》で交換可能なスキルは、同系統のもののみです。通常スキルと魔法スキルを交換することはできません』




 不意に、頭の中に音声が流れた。




「なっ、なにぃ!?」




 思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。


 どうも、交換できるのは通常スキル同士か魔法スキル同士のみらしい。


 


(そーゆーのは、先に説明しといてくれぇ!)




 歯噛みしつつ、仕切り直した。




「《交換リプレイス》――《魔力壁マジック・ウォール》を捧げ、我が手に《蒼放電ブルー・リリース》を!」




 刹那、彼我の身体から出た光球が空中で交差し、入れ替わる。


 よし、今度は上手くいった。




 僕は、所持アイテムとして腰にいていたナイフを引き抜いて、構える。


 それから、弧を描いて迫り来る跳蜂バンブルビィ達に向かって叫んだ。




「終わりだ! スキル《蒼放電ブルー・リリース》――」




 《蒼放電ブルー・リリース


 MPを30消費して放つ、範囲攻撃型の電撃魔法。




 手にしたナイフが帯電し、青白い稲妻が刃の周囲で踊る。


 それに呼応するかのようにして、跳蜂バンブルビィ達の身体が帯電を始めた。




 そういえば、これは元々こいつらのスキルだ。


 同じ《蒼放電ブルー・リリース》を撃って、こちらの攻撃を相殺するつもりなのだろう。




「上等だ! お前達を半分以上倒して、僕もレベルアップしてる! どっちの雷撃が強いか……白黒はっきりさせようか!」




 そう叫ぶのと同時に、跳蜂バンブルビィ達の身体から一斉に電気が放たれる。


 それにカウンターを合わせるようにして、僕は思いっきりナイフを振るった。




 剃刀かみそりのように鋭く、疾風のごとく研ぎ澄まされた一振り。


 青白い輝きが半円を描き、跳蜂バンブルビィ達の電撃をものともせず打ち払い、飲み込み、電撃の大波となって襲いかかる。




「――蒼雷ブルブリッツ三日月クレッセントッ!」




 蒼銀そうぎんに輝く電撃が、跳蜂バンブルビィ達を捕らえ、バチバチと音を立てて青白く明滅する。


 高電圧の電撃魔法を真正面から喰らった跳蜂バンブルビィ達は、身体からプスプスと煙を上げながら地面に落ちた。




「よしっ、大掃除完了」




 ナイフを腰にしまって、パンパンと手をはたいた。




 残りの跳蜂バンブルビィ達を一掃したからだろう。


 「レベルアップしました!」の連呼が、また始まった。




(これは、しばらくウルサイだろうな……)




 苦笑いしつつ、ステータスを確認する。




◆◆◆◆◆◆




 エラン


 Lv 52 → 85


 HP 1220 → 2080


 MP 290 → 412


 STR 221 → 380


 DEF 187 → 291


 DEX 89 → 120


 AGI 101 → 145


 LUK 72 → 99




 スキル(通常)《衝撃拳フル・インパクト》 《サーチ》 《飛行フライト》 《ズーム》 《ドロップ増加+20%》 《ダメージ増加+30%》 《速度超過スピードアップ》New! 《標的誘導ターゲット・インデュース》New!


 スキル(魔法)《火炎弾フレイム・バレット》 《氷三叉槍アイス・トライデント》 《冷却波クール・ウェーブ》 《蒼放電ブルー・リリース》New!  


ユニークスキル 《交換リプレイス


アイテム 《ナイフ》×1 《HP回復ポーション》×24→33 《MP回復ポーション》×19→26 《状態異常無効化の巻物》×20 《魔鉱石・赤》×16→22 《魔鉱石・黄》×28→41 《魔鉱石・青》×47→65 《衣装(女の子用)》 New!


 個人ランクB → A


 所属 《緑青の剣》(追放)




◆◆◆◆◆◆




 おお、上がった上がった!


 遂にAランクだ!




 新たに手に入れたスキルが、因縁浅からぬ《標的誘導ターゲット・インデュース》なのは、あんまり嬉しくないけど。


 ウッズが僕を切り捨てた時に使った、忌まわしいスキルだから、正直使う気にはなれない。




 それはともかく――ツッコミどころが一つある。




 新たに入手したアイテム――《衣装(女の子用)》。




「いやなんだよ、女の子用の衣装って! てか、そんなものまでドロップするのっ!?」




 手に入れた衣装を、まじまじと見つめる。


 肩が大きく開いた、薄黄色のジャンパースカート(チャームポイントに、フリルとリボン付き)だった。




 なんというか……うん。




「要らんわこんなもんっ!」




 思わず地面に投げ捨ててしまった。


 圧倒的に需要ゼロだ。こんなの着ようものなら、いい笑いものである。




「お、置いてこう。持ってるだけで、変態扱いされそうだし」




 ジャンパースカートを丁寧に畳み、その場にそっと置いて、僕はその場を去ろうと歩き出した。


 そのとき。




「きゃぁあああ!」




 黄色い悲鳴が、洞窟の奥の方から聞こえてきた。


 声からして、女の子のものだ。たぶん、最下層攻略に挑んでいる最中の攻略者だと思うが……何かに襲われているのか?




 目を細めて、洞窟の奥の方を見やる。薄らと見える出口の向こうに、緑色の何かがあるが、それが何なのかはここからじゃわからない。




「っと、確か僕、《ズーム》を入手してたっけ」




 《ズーム》。


 二キロ先までくっきりと見える、遠見のスキルだ。人間望遠鏡、スタンバイ。




 《ズーム》のスキルを起動し、声のした方――洞窟の出口を、瞳に拡大投影した。


 そこに映っていたのは――

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