第7話 作者様、、

 

 作者は記した。

 『神野半度は周囲を観察しながら言った。

 

 「おお!侵入成功!これが異世界かぁ!」』

 

 神野半度は、記された通りに言葉を発した。

 

 固唾を呑んで、固まるローラ。

 

 作者は記した。

 『神野半度はローラを見つけると、その整った顔を破顔させながら言った。

 

 「ローラ!ローラ!会いたかったよ!大好きだよ!」』

 (と、突然の告白!!)

 

 神野は、また記された通りに。顔は修正された。

 

 ローラは、突然の告白を受け、緊張と動揺が極まる。心臓の高鳴りで、体がぐらつきそうになるのを堪えた。

 そして、思った。

 (早く、何か指示を、このままじゃ、、)

 

 作者は記した。

 『ローラは、作者に抱きついて言った、

 「作者様!会いたかったです!」と。』

 

 そう記された瞬間、

ローラの家の外が、ぼとぼと、と、勢いのある鈍い音で騒がしくなる。

 何か、大きな泥でも転がって来ている様な、そんな振動を地面から、ローラと神野は感じる。

 

 ローラは、横目で窓から家の外を見る。そして、ローラは驚愕する。

 

 大量の、ローラ、の様なものが、ぐねぐねと、むちむちと、ぷるぷるしながら、家のすぐそこまで近づいていた。

 

 ローラが気づくと同時に、ローラの家の扉は一瞬にして、破壊音とともに吹き飛んだ。

 玄関からなだれ込む大量の、ローラの様なもの達が、家の中を一瞬にして満たした。

家の中は、ぎゅうぎゅう詰め。

 神野とローラはそれらの強烈な圧力によって、壁に追いやられ、今にも潰されそうになる。

 (ぎ、ぎゅるしい。)壁に押し当てられるも、なんとか声を出さずに、懸命に耐えるローラ。

 

 「作者様!会いたかったです!」

 「作者様!会いたかったです!」

 ローラ群の先頭のローラ達が、神野に到達し、抱きつくと言葉を発した。

 

 「作者様!会いたかったです!」

 

 作者は慌てて記した。

 『神野は慌てて叫んだ!

 「な、なんだけれー!」』

 

 「な、なんだけれー!」そう叫ぶ神野の体は、足から首の下まで、ローラの様なものが巻きつき、そして顔にもローラが巻きつく。

 

 同じ時、近くの温泉へ行っていたフローラが、空を飛ぶ魔法でローラの家の近くに、一人で戻ってきた。

 

 「はぁ。せっかくお風呂入れると思ったのに、あのローラ様達は、もちもちぷるぷるなのは良いが、ぐねぐねしているのがいかん。それに動かないし。これでは体も洗ってあげられない。

 もっと、こう、骨がしっかりある奴を、、」

 そう言ったフローラの視界に、

ローラの家の中にぞろぞろと入って行く、大量のグネグネローラ達が入り込む。

 

 「な、何だと!何故あいつらは動いているんだ!ローラ様は無事か!」そう叫ぶフローラの視界に、また新たに入り込むものがあった。

 

 それは、大量のグネグネローラ達の、最後尾を、お腹を押さえながら、ふらつきながらとぼとぼと歩く、ぼろぼろな服のローラ?の姿。

 そのローラ?は、他の個体とは異なり、しっかりと足で歩いている。

 (あ、あれは!ローラ様!

 あんなぼろぼろな姿にされて!

 お腹も押さえて、痛々しい!きっとあのグネグネローラ様達に酷い事にされたんだわ!)

 そう思いながら、フローラはそのローラ?に近づき、体を優しく支える。

 

 「ローラ様!申し訳ございません、私が居なかったばかりに、こんな酷い事をされて、、」そう言うフローラに、苦しそうに、消え入りそうな声で、ローラ?が何かを言った。

 

 「はい!何でしょう?!」ローラ?の口元に耳を近づけるフローラ。

 

 「フ、フロ、、、オ、ラ。」ローラ?は苦しみながら声を絞り出す。

 

 それを聞いたフローラ。

 フローラの頬に、涙がゆっくりと、伝う。

 

 そして、フローラは、涙を更には見せない様にと、手で拭い、精一杯の笑顔で優しく言った。

 

 「はい、承知いたしました、ご主人様。

 

 わたくしは、そうおっしゃって頂けて、とても嬉しいです。

 

 おフロ、ですね。

 

 かしこまりました。もう、大丈夫ですからね、

 エスコート、おまかせ下さい。」

 

 フローラはローラ?をお姫様抱っこの状態で優しく抱え上げると、

 「ランデブー!」一瞬にして飛び去った。

 

 ローラ?は呟いた。

 「プレイ、、ヤー、キル、、倒す。」

 

 

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