結婚したい、結婚させたい
孝司は中学3年生になった。
「来月、修学旅行だから、持って行くもの買ってよ」
絵理と孝司とパブロは夕飯を食べている。
「うん、何足りないの?」
絵理が孝司に聞いた。
「新しいTシャツとか、靴下とか」
「じゃ、土曜日買いに行く?」
「絵理とは、嫌だ。パブロ兄ちゃん一緒に行けない?」
「じゃ、一緒に行くか」
パブロは笑って答えた。
「ねぇ、コレ買っていい?」
孝司とパブロは店で服を見ていた。
「ん。いいよ」
孝司がパブロと買い物に行きたかった理由の一つに、パブロの財布の紐がゆるいということもあった。
「ねぇ、もう一枚欲しい」
「んー。いいよ」
(ちょろいな)
「帰りご飯食べて行くか」
「やった。焼肉!」
「パブロ兄ちゃんと絵理っていつ結婚するの?」
孝司は肉を焼きながら話す。
「ん?孝司が大学行ってからって、絵理は言ってたよ」
「え?!そんなに遅いの?」
「らしいよ。ま、俺もそれでいいかなって」
「いやいや。パブロ兄ちゃん、おじさんになっちゃうじゃん…」
「うーん、ね…」
パブロは曖昧な表情をした。
「俺、高校入ったらしなよ」
「うーん。籍いれても、今と生活変わんないしね。それでもいい気もするけど」
「俺、2人の世話すんの疲れたんだよ。はやく、結婚して。パブロ兄ちゃんは、俺が大学に行くまで、待ってたいの?」
「いや。それだと30歳になるからな…。ギリ29歳か…?」
「じゃ、すりゃいいじゃん。話しなよ?俺が修学旅行から帰ってくるまでには、話してね」
「何で修学旅行?」
「こういうのは、期限があったほうがいいからね」
「ほ~」
関心したように言う。
「それに俺がいない方が切り出しやすいでしょ」
「孝司君、ホント大人よね」
「なんでオネエ言葉なの?」
孝司は笑った。
「じゃ、行って来ます」
孝司は2泊3日の修学旅行にでかけた
「パブロと2人っていうのも、新鮮だね」
「だな」
パブロは、ノートパソコンで仕事をしていた。
「ちょっと待ってね。これだけやってから…」
「うん」
絵理は、パブロの背中に寄りかかりながら待つ。
「かわいい事しないの」
「かわいいの?」
「うん」
パソコンから、目を離さずに言った。
「ねー、後は?どこが好き?」
「んー?一緒にいて楽しいとこ…」
キーボードをひたすら打つ。
「後は?」
「後?家の事しっかりやってるところ」
「他には?」
「他にぃ?」
パブロは笑った。
「泣き虫なところとか…」
「ふ~ん」
絵理はニヤニヤしている。
「絵理は?俺のどこが好きなの?」
「全部」
「ずっり〜」
パブロは背中で、ドンとえりにぶつかった。
「痛いっ」
「ずるいから」
「仕事終わりっ」
「お疲れ様」
パブロはえりの隣に座った。
「絵理」
「ん?」
「結婚したい」
「うん」
「じゃ、来年しよ」
「え?孝司、大学行ったらって言ってたじゃん」
「遅いの。俺、おじさんになっちゃうから」
パブロが絵理の顔を覗き込んだ。
「んー」
「孝司はいいんだって。むしろしてほしいみたい」
「そうなの?」
「もう、俺らの世話したくないって」
「あぁ、そうね…」
「来年」
「うーん」
「孝司が良いって言ってるんだから」
「そうだね」
「そんなに大学にこだわる?」
「違くて」
「ん?」
「こんなダラダラな感じで、言われたくない」
「あ…、そっか」
「レストラン」
「え?」
「高級レストラン行って、その後指輪買いに行こ」
「それ、前に俺が言ったら嫌だって言ってなかった?」
「言ったけど…。ダメ?」
「じゃ、サプライズで」
「もう言っちゃってんじゃん…」
「店。いいトコ探しとく。当日まで内緒」
「ホント?嬉しい」
絵理はパブロに微笑んだ。
パブロは、絵理にそっとキスをした。
「孝司、おかえり」
パブロは、修学旅行から帰ってきて居間でゴロゴロしている孝司に声をかけた。
「ん。ただいま。疲れたー…」
「お疲れ様。楽しかった?」
「うん。でも、疲れたー…」
「あはは。そうか」
「ね、結婚、決まった?」
「うん」
パブロはソファに座った。
「良かった」
「うん」
「俺のおかげだからね?」
「…何?何か買って欲しいの?」
「違う」
「じゃ、何?」
「いつか、ホントにしたいことある時に、その恩を返してもらうから」
孝司はニヤッと笑った。
「…なんか…、嫌…」
「…そう?」
「ま、いいか。孝司が頼ってくれたら嬉しいし」
「ホントの弟になるからね」
「…そうだよね」
「そうだよ」
「そっか」
パブロは嬉しそうに笑った。
「可愛いね」
孝司が、からかうように言った。
「念願だったから」
「…?」
「孝司と兄弟になることが」
「…絵理より、俺の事の方が好きっぽいね…」
「種類が違うけど、同じくらい大事だよ。でも、絵理には言わないでね」
「…絵理、妬く?」
「怒る。拗ねる。叩かれる」
パブロの真面目な顔を見て、孝司は笑った。
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