他の男と一緒にいるなよ

小林君は、考えた。

(はて、なんと話しかけようか…。

わざわざ部屋に行くのも違うしな…)


「お兄ちゃん!帰る!」

突然、春乃の声がした。

「えぇー?!まだ来たばっかりじゃん!」

「孝司と遊びたくない!」

「春乃ちゃん、孝司に嫌な事された…?」

絵理は焦って春乃に聞いた。

「兄ちゃんが嫌がってるから帰れって!」

「は?」

私は思わず、すっとんきょうな声を出した。

「もう、帰る!」

「これからが、いいとこだったのにぃ…」

小林君は言った。

(おいっ!)

「わかったよ…。ごめんな、谷川…」

「ううん、全然!こっちこそごめん」

(助かった…)

「お兄ちゃん、先行ってるよ!!」

春乃はドシドシ音をたてて、玄関を出てしまった。

(それにしても、孝司のやつ…)


絵理が小林君を送りに玄関に行った時、パブロが偶然部屋から出てきて、二人に気がついた。

(おっ。グットタイミング♪)

「谷川…。ちょっとごめんね♪」

そういうと、小林君は絵理の手を握った。そして、パブロの方をチラッとみた。

パブロの顔が、怒りに満ちていた。

(ほら、やっぱり♪)

「谷川、やっぱり俺らのこと見て怒ってる」

絵理にコソッと言った。

「え?」

その、コソコソ話がまたパブロを怒らせた。

パブロがズンズン絵理と小林君の方にやってくる。

小林君があおるように、ニコッと笑いかけた。

「どうもお邪魔しまし…」

た、を言い終わるまえに、パブロは絵理の手を奪い取って、奥に引っ張って行った。

「ちょっとパブロ?!」

「じゃ、谷川お邪魔しました!頑張ってねー!!」

小林君は元気にそう言って去って行った。

足取りは軽快だった。



パブロは絵理をリビングまで引っ張って行った。

「ムカつく」

「…なにが?」

「あいつが!何で家まで来るの?なんで手繋いでたの?!」

「え、だから孝司と小林君の妹が友達で…」

「やだ」

「え?」

「他の男と一緒にいるのやだっ」

「なんで…別に関係ないじゃん」

「…」

あまりに理不尽な事をいうので、絵理はイラッとしてリビングから出て行こうとした。


また腕を掴まれた。

「ほんとやめて…」

絵理が言うと一瞬力が緩んだ。

絵理は手を振り払って部屋を出ようとした。

次は手を掴まれた。

パブロは手に力を込めた。

(もうなんなの?)

「好きだから」

(?!)

「好きなの!だからやだ!」

パブロは怒った顔をして絵理をみた。

(今、好きって言った?)

絵理が混乱して黙ってると、パブロは

「ごめん…。…好きだ…」

と言って、今度はしゃがみこんだ。


「じゃぁ、なんで昨日あんなこと言ったの…?」

(……)

絵理はパブロの言葉を待った。

「…もうすぐ…、…魔法界に帰らなきゃいけないから…」

パブロは下を向いている。

「え?!うそ…!いつ…」

「1週間後…」

(やだ…)

絵理は一気に涙が溢れてとまらなかった。


パブロは、泣いてる絵理を見て胸が詰まった。

「ごめん…。好きって言ったら、帰る時にもっと悲しむかなって…。でも、他の男と一緒にいるなんて我慢できなくて…。勝手でごめん…」

「…行かないで…」

絵理はポロポロ涙をこぼした。


パブロは立ち上がって絵理の顔を見つめた。

「俺…、魔法使いになるのが、子供の頃からの夢でさ。それを諦めるわけにはいかない…」

「…もう会えなくなる…?」

絵理は震える声で聞いた。

「…絶対会えないと言う訳ではないけど…」

「…待ってていい…?」

「…」

パブロはそっと絵理を抱き寄せた。

「絵理…、好きだよ…」

「私も…」

「でも、無理だよ…」

「何で?」

「2年は会えない。」

「うん」

「その間に…、好きなやつとかできるでしょ?…」

「できないよ」

「そんな、言い切れないでしょ」

「パブロに好きな人ができるってこと?」「違くて…。今日みたいに…、絵理が他の男と一緒にいるの見たら…。それ考えただけでいやだ」

パブロは拗ねた。

「…なんで今、私が他の人と付き合うかもとか考えるの?」

絵理は少し厶ッとした。

「…え」

「ずっと好きでいてくれるって思わないの?」

「…思えない…」

(なんで?イラッ)

「俺、怖いもん。だからだめ」

パブロは、絵理の体を離した。


「好きだよ。ずっと」

絵理はまっすぐパブロの目を見て言った。

「…絶対?」

「絶対」

「嘘つかない?」

「つかない」

「約束できる?」

「もうっ、しつこい。ずっと好き」

「…うん…」

絵理は、パブロが涙目になってるのに気がついた。

パブロは恥ずかしくなって顔を背ける。

「かわいい」

絵理は微笑んだ。

「笑うな」

パブロの顔は赤くなっていた。


「ずっと好きでいるって…。なんでかな。…絶対にそんな気がする」

「それは…俺も…」

パブロと見つめあった。


パブロは、絵理を優しく抱きしめた。

そして、ぎこちなく、絵理の頬を触った。

2人の顔が少しずつ近づく…。

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