彼は 魔法使いで、意地悪で、好きな人 …エピソード0

Nobuyuki

え…?どこから来たって…?

「わっ!!!」

とある日の昼下がり、絵理は突然の事に驚いて声をあげた。

それは絵理の目の前に突然男が倒れ込んできたからだ。

それも上から落ちて来たかのように現れた。

(この人…、どこから落ちて来た…?)

絵理は上を見て下を見て上を見て、最後に目の前で倒れている男を見た。

(んん?!)


男は頭を抱えて痛みに耐えていた。

「痛ってぇ!痛え!!」

「あの…、大丈夫ですか?!」

にわかに信じられない光景に絵理はまだ戸惑っていた。

「痛たたた…」

男は相変わらず声を出していた。

「救急車呼びますか…?」

(あ、パラシュート?)

絵理はパラシュートが落ちていないか探した。

が、どこにも見当たらなかった。


「…大丈夫ですか?」

男は絵理の声が聞こえてないかのように、ひたすら騒いでいた。

(でも、上から落ちてきたのに…)


「あの…」

「はい?!!」

絵理は倒れていた若い男に声をかけられてハッとした。

「ここは…」

「え?!ここ?」

「人間界…?」

「……」

若い男は頭をさすりながら、立ち上がって絵理を見た。

その顔は思ったよりも若く、絵理は自分と同じ中学生かもしれないと思った。

「あの…ここ、人間界?」

(あ、…やばい人…)

「…すいません…」

絵理はサッと逃げようとした。


「待って、待って!!」

若い男もとい、その少年は絵理の服の袖を掴んだ。

「えっ……!」

絵理は変な汗をかいた。


その時、

「絵理ー」

後ろから、名前を呼ばれた。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん」

絵理は少年の気がそれたタイミングで、服を引っ張って離れた。


「なぁに?絵理の友達?」

近づいてきた和美は絵理に聞いた。

「イヤイヤイヤイヤ…」

絵理はできる限り大きく否定した。


「あぁ、すいません。えっと…。あの…」

絵理達は、何か言いたそうな少年の次の言葉を待った。

「俺、外国から来て…」

「…外国の方?」

「…そうです。絵理さんとは、さっき会ったばかりで…。友達とかではなく…」

(やだ!なんで名前…?!)

「あ、さっきお姉さんに名前呼ばれてたから…」

「えっ?!」

「え?」

(私、声にでてた…?)

「あ、俺の名前…。パブロ・グリーンって言います」

「あ、どうも谷川です」

お互いに頭を下げた。

「…。それで…。あの…、困ってて…」

「どうしたの?」

「家、追い出されて…」

「そうなの…大変だね…」

「頼れる人いなくて、」

「家には、帰れないの?」

博之は本当に心配して聞いた。

「家…外国で…。家族も外国に帰ってしまって…」

「え?!!!」

博之も和美も絵理も大きな声を出した。

「どうするの?!お金は?」

「お金…持ってるけど、帰れるほどでは…」「じゃ、どうするの?!」


「あの、大変申し訳ないんですが…。しばらく泊めていただくことは…、できませんか?」

パブロはダメもとで聞いてみた。

「いいけど…」

「いいの!?」

パブロは自分で聞いておいてびっくりした。


「お兄ちゃん!」

絵理は博之の耳元でコソッと言った。

「…やばい人だと思うよ…」

「んー、じゃ、とりあえず、ご飯食べにおいでよ」

博之はにっこり笑った。




「なんで追い出されたの?」

唐揚げを食べながら博之は聞いた。

「毎日、じいちゃんと、めちゃめちゃケンカしてて。俺、勉強しないし、態度悪いし」

「へぇ。そうなんだ」

「それで、いよいよ、じいちゃんキレちゃって」

「そっかぁ」

「うん」

パブロはパクパクと唐揚げを食べる。

「でも。それで、1人、日本に置いて行っちゃうってすごいね」

「相当ムカついてたんだろうね」

パブロはひょうひょうとして言った。


「外国ってどこなの?」

唐揚をあげ終わった和美が来て、聞く。

「あぁ…」

「ん?」

「あの…、信じてもらえないと思うんですけど…」

「ん?」

「あのぉ…。…」

「?」

「とりあえずコレ見てもらえます?」

パブロがコップを触ると、中の水が溢れ出した。

「あっとと」

博之かコップが倒れたのかと思って拭く。「弱いか…」

「ん?」

「じゃ、」

と言って、テーブルを触ると、2倍くらいに大きくなった。

「わぁ!」

皆お腹を押された。

「あっ!危ないか」

テーブルが元に戻る。

「あー、これか」

唐揚げを指差すと、唐揚げが5倍くらいに大きくなった。

「わぁ!」

5歳の弟の孝司が喜んだ。


「なにコレ!すごい!マジック?」

絵理は興奮して聞いた。

「じゃなくて…魔法…」

「え?!」

絵理は間抜けな顔で聞いた。


「これ、全部魔法なの」

一気に部屋にたくさんの花が、降ってきた。

「?!」

「なので、俺は魔法の世界から来たの」

瞬間、花は消えた。

「…」

皆パブロの方を向いて、絶句していた。

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