塔の下には楽園がある

白羽 卯鳥

異人

 意識がゆっくりと覚醒する。


辺りを見渡してみるが少し薄暗い何もない部屋に居た。どうやら床に直で横たわっていたので体の節々が痛む。


冷静になって自身の現状を確認してみる。


「俺は意識を失っていたのか…」


 意識を失う前の事を思い出してみる。


 俺の名前は「セイ。年齢は15歳だ」確か学校へ行くバスに乗っていた記憶がある。たしか眠くなってそのまま寝ていたのが最後の記憶だ。


 何故ここに居るのかも、ここがどこなのか分からない。周りを見てみると壁に囲われた小さな部屋で倒れていたようだ。天井の方に見てみると小さな扉があるがさすがに届かないだろう。


 横を見てみると小さな窓があり、そこから明かりが入ってきているのが分かる。


 その小さな窓から外を見てみるとどうやら、ものすごく高い所にいるのが分かる。遠くに地平線が見える。いったいどれ程の高さなのか皆目見当もつかない。


 何はともあれ、この場所から移動する事にした。

 自分が居た部屋の扉を開けると階段がすぐあった。階段を降りて扉を開けると少し広い空間に出る事が出来た。


 その広い空間と繋がっている部屋を見て回ると、見慣れぬ機械や小さな家見つける事ができた。


 そして何やら小さな家のような場所から小さな羽が生えた存在を発見する事が出来た。その存在は小さな人形に羽が付いて飛び回っている。幼い頃何かで読んだおとぎ話の妖精のような出で立ちをしていた。


 しかし俺が発見出来たように、相手側も同じくこちらを発見したようで、何人か驚いたように空中を飛び回っている。そして何人かは空中で分かれて違う場所へ行き、一人がこちらの近くに寄って来た。


 その姿は小さな可愛らしい女の子の妖精のようだった。そしてその小さな妖精は俺の分かる言語で話しかけて来た。

「!?ねぇ。あなた異人かな?」


 俺は質問の意味が分からないので怪訝な顔で言い返した。

「異人?なんの事でしょう?」


「上の階から降りて来た生物を私達は異人と呼んでいるのよ」


(上?と言われても少し階段を降りただけなんだが?)

「とりえず、わからない事だらけなんだが、ここは何処?」


「ここは塔よ」


「塔?」


 そんな会話をしていると、先程違う所へ飛んでいった小さな集団がこちらへ向かってきた。そして俺の目の前にある機械の様な物の上に降り立った。


 先頭にいる小さい者は他の者より少し年老いているようだ。そして俺に向かって何やら話しかけて来た。

「異人の方。色々混乱されていると思われますが、場所を変えて説明させて下さい。私はこの者達のまとめ役を行っている「プラ」と言う者です」


「それは丁寧にありがとうございます。俺の名前はセイ。何故ここにいるかもわからない状態の者なんだが、プラさんが説明してくれるのかい?」

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