第53話 地底湖の水
「えっ!?」
そう言うとロバートは慌てて俺のおでこに手を当てる。
「熱は??体調は悪くなったりしてない?!」
慌てふためくロバートの手をおでこから外し、ロバートの膝の上に戻す。
「熱も出てないし体調もゼッコーチョー。そもそも地底湖の水飲んでからかなり時間が経ってるよな?ここまで症状って出ないものなのか……?」
「……いや、普通は瘴気が溶け込んだ水なんて飲んだらその場で卒倒してる」
「お前、なんでそんなとこの水飲んじまったんだよ……」
ロバートは心配げな表情を顔に浮かべ、リアンは呆れ顔をしている。
「いやだってさ、
思わずドラコに同意を求める。
すると、昼寝をしていたドラコは目を開け、そうだと言わんばかりに『クォ!』と鳴いた。
そしてのそり、と起き上がり俺たちの座っているベンチの辺りにやってくる。中には入れないので、俺はベンチから立ち上がりドラコの側へ行った。
「どうしたー?」
ドラコと目を合わせて聞いてみると、頭を下げ、ぺろぺろと水を飲む動作をする。
あぁ、水が飲みたいのかな?
そう思い、俺は手のひらを皿にして水を出してやった。
するとぴちゃぴちゃと水を飲み出す。
やっぱり、なんとなくだけど地底湖で隣にいたやつと似てる気がするんだよなー。
「ドラコー、お前地底湖でも俺と会ってるか?」
何となく聞いてみると、一旦水を飲むのをやめ、『クォ!』と鳴いた。
そして正面から水を飲んでいたドラコは俺の後ろをぐるっと回り、右側へ来て水を飲むフリをする。
その位置は地底湖で俺の隣にいた
……やっぱり意思が通じてる?
「ハヤテ、どうしたー?」
固まっている俺を見てリアンが声をかけた。
「あー、その地底湖で水を飲んでた時、隣で水を飲んでたのがドラコっぽい……?」
「へぇ!お前
リアンが凄く感心した眼差しを向けてきたので慌てて否定する。
「いや、ジェスチャーでなんとなくそうかなって!」
「いや、でも案外そうかもしれないよ?」
ロバートがドラコに近寄り、頭を撫でると気持ちよさそうにドラコは目を瞑りその場でまた昼寝の体勢になった。
「ドラコ、ハヤテについてきちゃうくらいだし初めからなんか慣れてたろ?もしかして一緒に地底湖で水飲んだのドラコも覚えてて、水飲んでもケロッとしてるハヤテに仲間意識持ったのかも……」
「へ?」
「お前、
……リアンに爆笑された……
いや、いいさ。こんな可愛い
「そうだ、結局ハヤテの体調って今は異常ないんだよね?でも症状遅れてるだけかもしれないし、後で念の為ヘンリーせんせーに解毒薬もらって飲んでおきなよ?」
「解毒薬?」
「体内の瘴気を浄化してくれるんだ。まぁ疫病くらいまで流行っちゃうと薬足りなくなるけど、今ならあると思うからさ」
昔、足りなかったことで救えない命があったことをロバートの表情は物語っていた。
心配かけないためにも後で先生に薬もらっておこう。
その時、俺らの会話を黙って見ていたケインさんが口を開いた。
「まぁ、もしかしたら元々ハヤテには瘴気の耐性があった可能性もあるな」
「え、そんなことあるんですか?」
驚き、ケインさんの顔を見る。
「ない、とは言いきれないだろ?世の中には特定の魔法使えないヤツや、特定の魔法にアレルギーあるやつとかもいる訳だし」
特定の魔法が使えない、ってあれか。確かライアンが回復魔法使えないって言ってたよな。
あとなんだ?
「魔法アレルギー?」
「そうだ。自身の出した火でも火傷するやつとか、回復魔法かけると逆に悪化するとか症状は多様だけど、たまに魔法に対してアレルギー反応出るやつがいるんだ。そういう奴らがいるなら、瘴気に耐性がある奴がいてもおかしくないだろ?」
……そう言われるとそういうもんなのかな?
てか、回復魔法で悪化って、そんな魔物がいるってヘンリー先生言ってたよな。人間でもあるのか……
そういう人、怪我した時に回復魔法かけられたら大変だ……!
俺がひとりで想像してアワアワしてると、演習場に声が響いた。
「よう、バリー!ここに緑珠守護団から来てもらった二人がいると聞いたんだが来ているか!?」
そう言い演習場に入ってきた人は、ジェイド隊長やバリー副団長とは比にならないほどの筋肉の塊みたいな人だった。
……絶対この人騎士団長!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます