第43話 街道を走る
緑珠守護団の詰所を出発し、今はまだ見慣れた森の中の街道を馬は走り抜けていく。
俺はロバートの馬の後ろでしっかりと手綱を握り……
「やっべぇぇぇぇぇ!!楽しいぃぃぃぃ!!」
歓声を上げていた。
いやこれめちゃくちゃ楽しい!
水上スキーってこんな感じなのかな?
俺がこの世界に来たのが向こうの月で五月。こっちも似たような気候らしくて一応四季があるらしい。とはいえ、三ヶ月経ちだいたい八月頃の気温にしては日本より過ごしやすい。森が近いせいかな?
だからこの森の中も、暑くなる季節の割には過ごしやすく、そんな中風を浴びながら滑るように移動していると快適以外言いようがない。
「ハヤテめちゃくちゃ楽しそうなんだけどー。俺もそれやりたーい」
俺の運転手、もといロバートがチラチラと後ろを振り返りながら羨ましそうにこちらを見る。
「悪いな、ロバート。いつか俺が乗馬覚えたら運転交代してやるからな」
「約束したからね!」
そう言い、視線を前へ戻したロバートが「あ!」と言って馬を急停止させた。
止まることを予見していなかった俺はそのまま宙を舞い、空へ放り出され、地面に落ちた……
「いてー!」
「わぁ、ハヤテごめん!前見たら道が塞がれててさー!」
馬から慌ててロバートが降りてきて俺を起こしてくれた。
ケイレブとヘンリー先生も馬を降り、こちらへ集まる。
街道は倒木で塞がれていた。
「あれー?今朝通った時はこんなことになってなかったんだけどなー」
そう言いケイレブが折れた木の周りを調べ始める。
すると、
「あ、原因あれか」
何本か倒れた倒木の先に見えたのは落石だった。
どうやら崖の上から落ちた落石で倒れた木が、その先の木を何本か巻きこんでなぎ倒していたらしい。
「うーん、森の中迂回した方が早いんだけど、この辺ちょっと木が多いからなぁ。ヘンリーとハヤテいるし、この倒れた木どうにかするか。他の人も通るだろうしな」
「あ、じゃあ俺ちょっと運びやすいように木を切ります」
「お、そんなこと出来んのか?」
木を蹴飛ばしてどかそうとしていたケイレブに助け舟を出す。
てか流石に蹴ってどかすのは無理だろー。
「草刈り用の魔法なんですけど、多分木も切れるんで。危ないから少し下がっててください」
倒木からみんなに離れてもらい、手のひらに魔力を集中させる。定期的に草刈りで使っていたから、この魔法は結構得意なんだよねー。
魔力を溜めていたその時、何か声がすることに気がついた。
一度魔力を集めるのをやめ、耳を澄ます。
──クオォ……
声はどうやら落石の方から聞こえるみたいだ。
「ハヤテ、どうした?」
なかなか魔法を出さない俺に、ロバートが声をかける。
「いや、なんか声がするんだよね」
「声?」
──クオォォ……
「ほら、やっぱり。悪い、俺ちょっと見てくる」
「いいよー、そしたら俺もあの魔法使えるからここの木切っとくよ」
「悪い、頼んだ」
木を切るのをロバートにバトンタッチして、俺は落石の方へ足を進める。
辿り着いたものの、積み重なった石と、やや大きめの岩が転がってるだけなんだけど……
ゴソ……
その大きめの岩を見ていた時、突然岩が動いた。
「うわ!」
一歩退いてよく見てみると、岩だと思ったのはかなり小さめの
その
バギンッ。
力の入れ方がまずかったのか、あれだけ崖に突進しても平気そうだった
それでも構わずもう一方の角で石をどかそうとしていたのを見かねて、俺はそっと近づいた。
──グルル……
それに気づいた
「大丈夫、何もしないよ。その石どかすんだろ?手伝おうか?」
言葉が通じるとは思わなかったけど、とりあえず石を指でさし、どかすジェスチャーをしながら話しかけてみる。
しばらくそうしていると、
石をどかす魔法は残念ながら思いつかなかったので、仕方なく手で石をどかしていく。
よかった、そんなに大きい石じゃなくて……
半分くらいどかしたところでみんながこちらに集まってきた。
「ハヤテ、木は切ってどかしたからもう出発するよ……って、なにしてんの?」
「あれ?これ
うっかり
「へぇ、珍しいな。
「あれ?この子、角片方どうしたの?」
俺の返答を待たず、三人は
「おーい、
「
ケイレブに言われ、石から少し離れる。
──カツン
何かを蹴飛ばし、足元を見てみると目の前の
それを拾い、更に石から離れておく。
「離れたな?行くぞー」
ケイレブの声に合わせ、地面が少し震え始めた。
「え、何?!地震?」
「何言ってんの。てかハヤテも得意だったじゃん。ちまちま自分で石どかさないで、こうすればよかったのに」
ロバートが呆れた顔で呟いた。
ガラガラガラ……
震えていた地面の石たちがゴロゴロと動き出し、少しづつ人の形になっていく。
「……あ!」
「ゴーレムだよ。一回人型にして少し歩かせてから魔力止めればそこに石動かせるでしょ?」
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