第2話 保護された少年《イレギュラー》、遊楽部ギン
一時間後。
無事帰投した私達は、陣地に設営された休憩室で簡易的な健康診断や各種検査を受けた少年と合流した。
自己紹介をして、歳の割にマセた雰囲気の少年からお礼を言われて、問題はその後だ。
「――で、まあ無事にみんなで帰ってこれたんでええんですけど」
私は世にも珍しい銀白色の髪の少年を抱えあげる。
歳の頃からして5歳か、6歳くらい。
干支一周分くらいは下の子供だ。
「なんでウチがこの子の面倒見なあかんのですか、隊長。さっさと後方に送ってあげな可哀想でしょ。いつまでも戦場に居させたらそれこそあかんて」
腕の中の子供は私に抱きついて離れない。
重い。子供って思ったより重い。
「駄~目。本来、アカネちゃんは命令違反で軍法会議ものなところを赤ちゃんの世話という軽微な懲罰任務で勘弁してあげてるんだからワガママ言わない」
私の腕の中の子供が、急に隊長の方を振り返った。
「赤ちゃんではありません五歳です。名前も言えます。
「ああわかったごめん。オジサンが悪かった。ギンくん。君のことはオジサンたちが守る。しばらくはお姉ちゃんと一緒に居てくれ。幸い我軍は優勢で食うものに不自由もしていない。君のお友達は少しだけ預かっておくから、今はお姉ちゃんと一緒にゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」
満足したのか、ギン少年はまた私の胸に顔を埋めた。
こいつほんま五歳児か?
「……ギンくんの乗っていた
隊長は私の耳元で低く囁く。
「日本の公安だ。エレニン星で内偵活動を行っていた男だ」
「なんで隊長そんなこと知ってるんですか」
「んふっふ~おじさん悪の組織のボスなんだよ」
「アホくさ。まあええです。同じ日本生まれですし、この子もちょっとは落ち着くでしょ」
「じゃあ決まり。そういうことで一つ頼むよ」
隊長はニマニマ笑いながら私の肩を叩く。
あの人は、私が子供の世話をしたら心が安らぐとでも思っているのだろうか。
腕の中の子供を見る。相変わらずセミみたいに私に引っ付いている。よほど怖い思いをしたのだろうか。まあ、したか。
私もいっぱいしたよ。
「坊主」
と、言いながらついつい頭を撫でてしまう。
あかん、これあかん。
「ギンです」
胸の間からモゴモゴ言われて聞き取りづらい。
あかんわ、ついつい撫でてしまってる。
「ギン」
「はい」
「お姉ちゃんの部屋でアニメでも見るか」
言ってから、不味いとは思った。
これ絶対情が湧く奴やんね。
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