計画的な僕の人生が彼女にぐちゃぐちゃにされる

@myyyyyy22

プロローグ

 多くの大人は、自分の人生に後悔を抱いている。

 少なくとも僕の周囲はそうだった。国立大学四回生の姉はもっと資格の勉強しておけば良かったと学生の定型文のような愚痴を酒に酔うたびに口にしているし、担任教諭はやりたいことを仕事にしたかったと、生徒である僕らに対して漏らすこともあった――学生を導く立場なのにそんなこと言うなよと、思わずツッコみたくなる。


 大人が過去に耽り、感傷に浸ってしまう原因はなんだろうか?

 思うに、それらはほとんど、計画性が無かったということに帰結する。

 

 ……もちろん、どうしようもない不幸な状況というのは世の中に確かに存在するわけで、そういった人たちのことは含めていない。『親ガチャ』『職場ガチャ』『環境ガチャ』なんて言葉が昨今は取り沙汰されることもあるが、それが良いか悪いかはさておくとして、実際問題生きていくうえでガチャ要素は紛れもなく存在する。

 それこそ、トラックに突っ込まれて異世界転生するくらいの僥倖に恵まれなきゃ逆転できないような人だっているだろう。

 

 だが、僕の姉や担任教諭はどうだろうか?

 事の深刻さに食事が喉に通らない、なんてバックボーンがあっただろうか?

 ……違くない?怠惰に漠然と生きてきたツケを今になって払わされてるだけじゃない?勉強すりゃよかったじゃん、進路選択を吟味すりゃよかったじゃんってならん?

 揉めるのが目に見えているから口には出さないが、僕はそう思う。


 だから僕は――和泉泰介は、計画的に生きることをモットーにしている。

 一日一日を後悔しないように自らがやりたいこと、やるべきことをしっかりと自覚する。クラスメイトとの益体の無いことや毒にも薬にもならない色恋沙汰には目もくれず、自分自身の人生に主体的に生きる。そして、勉強や趣味には全力を出す。

 そうすることの積み重ねで、最後には幸福な人生へ至る。

 大げさとも思えるだろうが、僕はそう信じていた。

 

 彼女と出会うまでは。


 

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