こちらJK、そろそろ好きな子を百合堕ちさせます。どうぞ

百日紅

第1話 -応答せよ。こちらJK

 もう、我慢の限界だ。

 毎日毎日、どうしてこんなに辛い思いをしなきゃいけないの。

 壊してやる。何もかも。全部!

 跡形も無く壊して、私好みに変えてやる!!



―――だって片想いが辛すぎるんだもん!!!



 私の好きな人がで、だからって。

 もう我慢の限界!

 毎日毎日、好きな人が他の誰かと仲良くして、どうして同性ってだけで恋心を我慢して辛い思いをしなきゃいけないの!?

 ………壊してやる。何もかも。全部!


―――好きな子の『同性愛なんて』って考えを跡形も無く壊して、『もう女の子しか好きになれない♡』って考えの私好みの女の子に変えてやるんだから!!!


 よし!決めた。今決めた!!

 そろそろ私も本気出す。

 応答せよ、応答せよ!私の奮い立つ恋心、応答せよ!!こちらJK、好きな子を百合堕ちさせるべく動こうと思う。


 覚悟してなさい!

 藤咲ふじさき 華撫かな



◇ ◇ ◇


 女子高生の朝は早い。

 その中でも今日この日に限って、頭一つ抜けて早いのがこの私、尾久おく 美撫海みなみだと自薦する。


 女子高生の嗜みとして、髪を綺麗に、そしてお気に入りの髪型を作るのに一時間少々。

 枝毛一本たりとも許されない。

 これはもはや一種の創作。

『如何にして好きな女の子が気に入る髪に出来るか』という極めて難易度の高い、芸術とも言える。


 しかし難易度の高さにおいて、その上を行く難題が今日の私の朝には存在する。

 そう、それは―――


 好きな子に食べてもらうお弁当作り!!


 私の好きな子こと藤咲 華撫は、一言でまとめると''ゆるふわ系JK''。

 ウェーブのかかった長髪。

 ほどよく脂肪がついた(ここ重要)身体。

 優しい性格。少し子どもっぽい。

 そして顔がめちゃくちゃ可愛い。

 それでいて、寂しがり屋。

 怖がりで、独占欲が強くて。

 ちょっと我儘。

 話し下手で、私が着いていないと、すぐに不安になっちゃう女の子。

 いつも私の後ろを引っ付いてくる女の子。


 それが、中学までの藤咲 華撫だった。

 だけど今は、見た目はそのままにして。

 いつの間にか、私の後ろを着いてくるばかりだった彼女はもう何処にもいなくて。

 今じゃ私よりも友達が多くて。

 リア充してると思う。


 そんな彼女に、今日、私は''愛''を込めてお弁当を作った。


 出来を見て、私けっこうやれば出来るじゃん!とか言って一人で自分をべた褒めした。

 自分の分のお弁当は少し彼女のお弁当に見劣りするぐらいの出来栄えにしておく。


 なぜなら彼女に、「私のために自分のものを疎かにしてまで!??」って、少しでも心に訴えかけるためだ。


 やり方が姑息ですって?

 ふふん。

 何とでも言えばいいわ。最後に笑う者こそが真の勝者なのだから。


 私が勝者、つまりは彼女とお付き合いする関係に至るためには、まずは少しでも彼女に意識してもらわなければ。

 女の子の良さを分からせるどころか、私個人の良さを知られていない状態では流石に話にならない。


「よし。準備カンペキ!」


 二つのお弁当箱をそれぞれ女の子らしい色の布敷で綺麗に包んで、それらを学生鞄に中身が崩れないように気にして収めて。


 姿見で身だしなみの最終チェックもして。


 最後に、昨年もらったお気に入りの髪留めをつけて。


 私はローファーをトントンと床を鳴らしながら履いて、玄関から家中に溌剌と声を響かせた。



「いってきます!!!」



 さぁ、私の片想いは今、よーやっとスタートラインを切ったのだ。

 え?ちなみに、その髪留めは誰から貰ったものなの、ですって??

 そんなの分かりなさいよ!!

 藤咲 華撫に決まってるでしょーが!



◇ ◇ ◇


お昼休み




























華撫「えっ?お弁当作ってきてくれたの?な、なんで?美撫海ちゃん、私がいつも自分のお弁当持ってきてること、知ってるよね??」


私「(´•ω•`)」

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