忘れた頃に襲うパニック障害

 中学生の頃、突然発症した。

 この学校は、特別支援学級と通常のクラスが設けられている。どちらにせよ、この学校には天国は無かった。コミュニケーションが苦手だから大丈夫そうに見えるこの支援学級。あの人がいなければ、生徒達は安心して過ごせていたのかもしれない。思春期というのは、皆して情緒が乱れていく。中には変わらない人もいるのだろうが、教室が、人間関係が荒れない訳が無い。当時、私には居場所がほとんど無かった。あの人から逃げても逃げても追いかけられ、夢の中でも追いかけられては、私だけに上から目線で自分勝手に怒られる。否、これは怒っているのでは無い。私に対する復讐だと言える。あの人は小学校も同じだった。いつ、あの人に恨みを買われたのか。実は、全然身に覚えが無いし、あの人を怒らせた原因なんて、普通ならば「次からは気をつけるよ」で終わっていい単純な話なのに。自分を棚に上げて、私に罪をなすりつけたいという最悪な事になってしまった。

 あの人はある意味二重人格なところがある。もしかしたら人格障害を持っているのかもしれない。と、疑うくらい、毎日性格が違った。こちら側も気が狂いそうな日々を送っていた。何せよ、あの人は口だけで何もしないのだから。特に、私をこき使って、時には奴隷のように扱う。私が何も出来ないと思っていたようだが、それは全くの誤解である。あの人が、私を何も出来ないように仕立ててきただけで、あの人がいなければ私は積極的に、自信を持って行動出来た。だと言うのに、あの人は私の自由を奪った。どちらも居場所が無い中、私はあの人の情緒に二年半も振り回されていた。

 ある日は、放課後の部活にまで追いかけてきて、「○○いない?」と大声で部室に響かせる。私はその時、机の下に隠れていた。だが、後日くらいには、「来い」と腕を引っ張られ、胸ぐらを掴まれ、近距離で問い詰められた。私は何も反論せず、ただひたすら黙り続けて耐えた。あの日、担任が助けてくれなかったら、今頃私は複雑性PTSDになっていたのかもしれない。否、もしかしたら少しなってしまっている。担任だけでは無く、何故かあまり関係の無い先生達が集って、私をあの時囲んでいたが、あの先生は心配しすぎである。あんなに呼ばなくていい、一人だけで十分だったのに。私は少し、恥ずかしく苦い思い出になっている。小学生ならまだしも、中学生なのだから。


 私が、高校一年生を休んでいた夏の日。

 高校に行っても、やはり私には居場所が無かった。全員敵で、休学せざるを得なかった。引きこもりになってしまうのを避ける為、週に何回か、電車で行った先にある図書館に行ってみたら?と母親に提案されて、何だかんだ調子がいい日は常に足を運んでいたくらいだ。昼間なら、同じ学生もいないし安心だった。・・・・・・だったのに。


 帰りの電車にて、私が降りる駅に偶然遭いたくないあの人に遭ってしまった。私の心臓は徐々に速くなっていき、足先から手の指先まで冷えていく感覚に陥った。


「大丈夫だよ、何もしないから」

と、あの人は笑っていた。


あれ、息がしづらい。


駅からは少し坂を上って、家まで歩かないといけない。

身体に酸素が行き渡らなくなっていき、発作を起こしながら帰っていった。


この日私は、早くこの町から出て行きたいと強く思ったのである。

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