第375庫 殺意
ギルド対抗戦当日。
大型転移陣に集合、ここから各ギルドごとに――戦姫の傷跡のフィールド上、ランダムに飛ばされることとなる。
開始時刻まで――残り約10分となった。
後藤さんとイリス、フレイム共にしっかりと来ていてくれたことに安堵する。まあ、協調性皆無の面子なので――心配事は大量に残っているけれど。
後藤さんは愉快そうにくつくつと笑い、
「殺気が充満していやがる。大半は有象無象の集まりってのは丸わかりだが、明らかにヤバいやつがいるじゃねえか」
「ヤバいやつ?」
僕の問いかけ、後藤さんはある一点を睨み付けながら、
「さっきから、俺たちに――明確な殺意を向けていやがるぜ」
その見つめる先、見慣れた人物が立っていた。
拳闘士専用の装備、闘神シリーズ、ブラウン色のボブヘアー、片側を可愛らしく三つ編みでアレンジした猫耳のミミモケ族である。
「……ニャニャンっ!」
僕は思わず、無意識に――名前を口にしていた。
僕の声が届いたのか否か、ニャニャンは僕たちの方に一瞬視線を移し――ニッと、なにかを示唆するよう口角を上げた。
……ニャニャンの隣、白い装束姿の男がいる。
聖術師の装備、ニャニャンの言いたいことが――伝わった。
間違いなくこの男こそが "Liberty"のリーダー、ベンジェなのだろう。
首元に大きな十字架、銀と白の入り混じった髪色、無を表した風貌からは氷のような冷たさを感じる。
僕と――目が合った。
「クーラ、そうか、君がクーラかぁ」
透き通る声だった。
ギルド対抗戦の参加者がたくさん集まる場、喧騒の中にも関わらず――その凍り付くような一声は、僕の耳に一直線に届いた。
「確実に、的確に、当然のごとく殺してやるからなぁ」
ベンジェの殺意が――僕を射抜く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます