第341庫 絆の都もふもふ
「はい、設置完了したヨ」
ついに、国が――建った。
自身で提案しといてなんだが、実際にその瞬間を間近で見ると――まさか、本当に実現可能だったことに驚く。
建造物が、一瞬にして――視界を埋め尽くした。
オンリー・テイル5本指に入る生産職プレイヤー、マイマイのデザインセンスは素人目にも飛び抜けており、僕の希望を寸分の狂いなく実現してくれていた。
早速、僕たちは中の散策を始める。
「ファンタジーな国、ソラたんらしくて好きヨ」
「また難しい注文したのね」
ゴザルが笑う。
「基本的には三国をベースにしてもらってるよ。そこに少し、居心地のよかったサンサンの和を織り交ぜてもらったんだ」
「マイマイも最初はアベコベにならないか不安だったけど、結局はこの世界の種族自体がファンタジーだから馴染むよネ。まあ、違和感がないよう細かい調整をして希望を叶えることはマイマイの腕の見せどころヨ」
全てを――詰め込んでもらった。
僕が今日までこの世界で生きてきた証、これからここをスタート地点に――自身の理想を目指していくのだ。
今はたくさんの建造物の中、人っ子一人いない状況は不思議な光景に思える。
そう、国は――僕たちだけでは成り立たない。
「それで、誰か住みたい人の目星は付いているのかしら?」
「その点については――王都含む各国から移民希望者がいないかどうか、王様たちに頼んで声明をだしてもらってるよ。大陸龍の経路に追加されるように話も付いてる。この国でできる仕事、名産品についても構想はあるんだ」
「いつの間に? 王様とお酒飲んで騒いでいるだけじゃなかったのね」
「……僕ってどんな印象なの」
「ソラちゃん、急にできる雰囲気発揮させないでよ」
ホムラが心底嫌そうに言う。
「ホムラ、なにを言っているんだ。構想があるだけで――それを実現させるために、皆の力を借りる以外に方法はない」
「ふふん。そっかそっか、私がなんでも手伝うからね」
嬉しそうに、ホムラが僕に寄り添う。
以前からは考えられない行動、ゴザルがポカンと口を開けて数秒固まった後――僕たちを慌てて引き剥がす。
「ま、待ちなさいよ。ペルファリア大山脈から帰って来てから――ソラたちの距離感おかしくない? 上手く言葉にできないけれど、近いというよりなんていうのかしら」
「私も思いました。ホムラお姉ちゃんの目が怪しいです」
ホムラはフンッと鼻を鳴らしながら、
「ゴザルちゃん、ナコちゃん、うかうかしてると――私が横から攫っちゃうかもしれないよ? 弱々ソラちゃんにはさぁ、しっかりした子が付いていないとだからね」
――「「はっ?」」
ナコとゴザルの言葉が重なる。
「おららぁーいっ! 痴話喧嘩は後ほどにするネ、今から行くところがマイマイが一番手間をかけたところヨ」
中心に、大きな屋敷が建っていた。
陽の国サンサンの紅桜組を意識した造り、街の治安を守りつつ――民と一番触れ合える場所と考えたからだ。
始まりの第一歩、屋敷内にて初のミーティングを開始する。
「今、僕がこの場に立っているのは――皆がいたから、いてくれたからだ。その想いを冠にしてみたいと思う」
そう、仲間がいたから――ここまで来れた。
「絆の都もふもふ、開国するよ」
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