第339庫 素材鑑定

僕が目を覚ましてから初の作戦会議中のことだった。


「国、できたヨ」


 マイマイが、耳を疑うような一言を発する。

 国が、できた? えっ、国ができた? 僕の意識が飛んでいる間に――一体全体、なにが起きたの?

 マイマイはホワイトボードに書き記していく。



・ 金銀石×100

・ メタルメタル×100

・ 魔紅玉×1



「前に、マイマイはこれだけの素材が必要って言ったの覚えてるカ?」

「国ができたってことは、必要数は足りてたってことだよね」

「足りてたどころじゃないヨっ! ソラたんたちが持って返って来た魔緋玉ってやつ、普通の魔紅玉の十倍くらいの成分が入ってたのネっ!!」


 マイマイガ興奮気味に言う。


「マイマイ、こんな素材初めて見たヨっ! もうヤバいなんてレベルじゃない、生産職の歴史が変わるレベルネっ!! 聞いてるのカっ?! 十倍、十倍ヨっ!?」

「十倍っ?!」


 とりあえず、同じリアクションで返してみる。

 僕は生産職に関しての知識は、そこまであるわけではない。だが、マイマイはここまで言うからには――かなりレアな素材なのだろう。

 マイマイはホワイトボードに追記しながら、



・ 金金石×300

・ ブラックブラック×300

・ 魔緋玉×20



「ソラたん、魔緋玉だけじゃないのネ」

「なんか、全部素材名が違うね」


 桁数も3倍くらいある。

 この素材名には見覚えが――マーケットでも高額売買、確かどれも一級品の素材だったはずだ。


「鉱石組、ゴザルたんとナコたんもヤバかったのヨ」

「桁数だけでもわかるよ」

「ふふーん。鉱石組の成果、驚くんじゃないわよ」


 ゴザルが胸を張りながら補足する。


「なんと、私たちは鉱脈を当てたの。ナコちゃんの勘に従って掘り堀りしてみたら、金銀財宝ざっくざく――ここ掘れニャンニャンよ」

「ここ掘れニャンニャンっ?!」

「そ、そこはスルーしなさい」


 さすが、多才なナコさんである。

 並外れた嗅覚、こういった一山当てる系にめっぽう強いのか? 今度、王都内にあるカジノに付いて来てもらおうかな。


「金金石とブラックブラックは、マイマイが指定した素材の上位に位置するネ。これだけの数は国家予算に匹敵するヨ」

「じゃあ、もう国として成り立つね」

「ソラたん、簡単に言うけど――ヤバさわかってるカ?」

「資産は多いに越したことはない」

「うーん、一理どころか百理あるネ。いやでも、新規国がここまで財力持ったら普通に目を付けられるんじゃないカ?」


 お金に関しては、冷静な見解のマイマイである。

 資産の管理係は今後必須か、全部マイマイにぶん投げてもいいかもしれない。僕のそんな視線を察したのか、マイマイが露骨に嫌な表情をする。


「……ソラたん、まだマイマイを酷使するつもりだナ」

「バリバリそのつもりだよ」

「いや、バリバリかヨっ! 少しは遠慮するか否定しろヨっ!!」

「マイマイ。全部上位素材になったわけだけど、国作りに関して――変わったこととかはあるの?」

「耐久力、見た目の麗しさ、全て一回り上になったネ。付け加えるなら、この量の素材があれば」


 マイマイは一度区切りながら、


「国が100個は作れるヨ」

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