第253庫 賛成と反対
「……ソラ」
ゴザルが心配そうに呟く。
さすが、国を治める王と言うべきか――自然体で他者を圧倒する振る舞い、若輩者の僕の考えを一気に押し潰そうとするのが見えた。
だが、僕も――軽い気持ちでこの場に立っているわけではない。
「報酬は――火の都サラマンの跡地を丸ごといただきたいと考えています」
僕の一言に、緊張が走るのがわかった。
向こうが隠すことなく攻めてくるのであれば、僕も僕で――真っ向から挑むが吉と判断した。
ウォータスは真剣な顔付きへと切り替わり、
「……その理由を聞いてもいいですか?」
「開国します」
「ははぁっ?」
ウォータスが素っ頓狂な声を上げる。
イワンドゥも目を見開き――カレアスだけがひっそりと笑っているのがわかった。僕があまりにストレートに言ったのがツボったのかもしれない。
もう、退くことは――できない。
「言葉通り、僕は――新しい国を作るつもりです」
「本気ですか?」
「本気です」
「俺はクーラの意見に――賛成派だ」
カレアスが手を上げる。
「もともと、この世界は――四国だった。フレイムドルフ亡き今、新たな野心が残党から燃え上がる可能性だってある。それを抑える意味としても、信用できるものにあの土地で国を作ってもらうのは良案と考えている」
「ふむ。世界の救世主ならば――折り紙付きというわけだな」
イワンドゥが呟く。
「モーフル殿、イワンドゥ殿、どちらも賛成といった雰囲気ですが――今は信用できていたとしても、いずれ反旗を翻すことだってあるのではないでしょうか」
「ウォータス王、この二人が強いのはわかるだろう。その気があったのなら――フレイムドルフと手を組み、三国はすでに制圧されていてもおかしくはない」
「我輩も同意見ではある――あるのだがな」
静かに座っていたイワンドゥが立ち上がる。
顔全体を覆う濃い髭、岩のように大柄な男が、ズカズカと大股で――こちらに歩み寄って来る。
僕の眼前で立ち止まり、じっと睨み付けてきた。
「……」
無言。
「……」
無言である。
数分ほど沈黙の時間が続き、なにをどう納得したのか――イワンドゥが豪快な笑みを浮かべて頷く。
「我輩も賛成だ。こいつの国を――見てみたい」
謎の一票、形勢は――僕に傾きつつあった。
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