第246庫 好きと大好き
王都上空、最終決戦から――数日が経った。
フレイムドルフが死んだことにより、サラマンの兵は全て撤退したとの情報が入る。アクアニアス、ストーンヴァイスも平穏が訪れるはずだろう。
今、僕たちは――"Nightmares"のホームに集まっている。
決戦後、皆の体力を回復するため――休息をメインにしていた。各々万全を期してからの今日、全員揃って顔を合わせるのは初となっている。
メンバーはニャニャンとキャロルさん、二人を除くメンバーがいた。
事が終わると、キャロルさんはあっさりウィンウィンに帰宅――また、大都市に長期で潜るとの話だ。
なんとも、キャロルさんらしい去り際であった。
「それじゃ、ホムは"Freedom"に戻る必要はないのね」
「リボルちゃんがいるからっていう――信仰的な理由で入ったからね。リボルちゃんがいないなら在籍する意味もなくなる。もちろん、信仰なんてニャンちゃんと共に行動するため、ギルドに入るための嘘だよ」
ゴザルの問いかけに、ホムラが頷き返す。
「ナコちゃんにだけは真実を伝えよう、伝えたいって――何度も考えた。でも、私嘘つくの苦手だからさ。言葉にしちゃったら、偽装した態度を継続することが難しいって思ったの。皆、本当にごめんなさい。謝っても許してくれないよね」
「二人の性格的に――僕はその判断、間違いじゃないと思うよ」
やはり、姉妹――ナコとホムラは素直なところが似ている。
無論、ナコよりも生きてきた年数の多いホムラが、なによりも自身のことは理解しているだろう。
「ねえ、ソラちゃん――ナコちゃんの全てを知ったような、大きい口叩くのはやめてくれないかなぁ? ちょっと、ちょーっと、自意識過剰すぎるよねっ?」
「穏便に援護したつもりなのにっ! 敵意向けるの勘弁してくれないっ?! ナコからもなにか言ってあげてよっ!」
「……」
「ナコ?」
「……私、知りません」
プイッと、ナコがそっぽを向く。
この数日の間、ゴザルから聞いた話なのだが――僕が空中戦艦から飛び降りた際、ナコも追いかけて来ようとしていたらしい。
ゴザルとホムラは戦う手をとめ、ナコを力尽くで制止したという。
「ぷふっ、ナコちゃんに嫌われてやんのーっ! 心配ばっかかけるからだよ? 自業自得だなぁ。ソラちゃんざまぁ! だよっ」
「……ホムラ、謝ろうとしてたんだよね?」
「あ、ごめんなさい」
取って付けたような謝罪である。
「まあ、ソラが飛び降りた時は――私もびっくりしたわ。なにか作戦でもあるのかと思ったら、奪ったスキルで命を繋いだんでしょう? 綱渡りにもほどがあるわよ」
「……ご、ごめんなさい」
「ソラちゃん、心が込もってないよ?」
「くそっ! なんで立ち場が逆転してるんだよっ? ホムラ、煽るようなことばかり言わないでくれっ?!」
僕はそっぽを向くナコの手を――握る。
怒らせたのなら、心配をかけてしまったのなら、誠心誠意――謝るのが一番の近道に違いない。
真っ直ぐに――ナコの瞳を見つめる。
「ナコ、許してほしい」
「……頭をなでて、抱き締めてくれたら許します」
ナコが上目遣いに要求してくる。
そのナコの反応を見て、ホムラが口をあんぐりと開き――僕とナコの間に勢いよく割って入って来る。
「待って、なんかナコちゃんの様子おかしくない? そんな簡単に許しちゃうような子に私育てた覚えないよっ?!」
「ホムラお姉ちゃん、邪魔しないでください」
「待って待って、超絶いやな予感するっ! 絶対におかしいってっ!! ナコちゃんの表情が、ナコちゃんがソラちゃんを見る目がさぁっ!」
「ナコちんはねぇ、クーにぃのことが好きなんだよ」
「ぢょ待ぇっ! す、好きっ?」
「好き」
ライカが空気を読まず断言する。
あえて、大好きと言わないところに――子供的ではない本気度を見出したのか、ホムラが泡を吹いてぶっ倒れるのであった。
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