第218庫 最上級の怒り

 風の都ウィンディア・ウィンドに到着する。

 レイナさんの話していた空に浮かぶ物体の正体、ある程度の想像はしていたが――実際に目の前で見ると驚きを隠せない。

 オンリー・テイルの世界設定に反した文明の集合体、明らかに異常な化け物がそこにはいた。

 それは、まぎれもない――『空中戦艦』だったのだ。

 黒一色に染まったフォルムに、火の都サラマンを象徴した燃え盛る炎のシンボルが刻まれていた。


 ゲーム時、フレイムドルフによる侵略はここまでのレベルじゃなかった。

 軍隊と強力な改造人間を引き連れて、圧倒的な『力』による破壊だったのだ。

 最早、これは文明の技術による蹂躙に他ならない。

 手の届かない頂からの攻撃、ただ一方的に殺戮されるのみ。

 地上から遠く離れた場所でも一目瞭然、ウィンウィンの街は見るも無惨な姿形となっていた。

 加えて、これは――人間の焼ける臭いだ。


「……ひどい、有り様だ」


 ファーポッシ村の記憶が蘇る。

 今の光景はあの時の比ではない。街中には隊列を組んで歩く軍隊の姿、あの装備は間違いなく――火の都サラマンの兵士だろう。

 ウィンウィンの民を真ん中に囲んで連行している。

 この状況で民を連れて行く理由など――人質、捕虜、見せしめ、それ以上でもそれ以下でもない。

 白雪は敵側に気付かれぬよう周囲を旋回しながら、


「クーラ、どうする?」

「……許せない」

「奇遇だな。妾もこういった一方的な破壊は好きではない。人間同士の争いに関わる気は全くなかったが、今なら少し手を貸してやってもいいぞ」


 僕の気持ちは一つだった。

 ウィンウィンに来てわかる、近くに来たからこそ――わかる。あの空中戦艦の中にナコが囚われている。

 奴隷輪から――ナコの痛みが伝わってくる。

 全ての元凶は一つしかない。

 僕のやるべきこと――諸悪の根源をぶっ壊す。


「師匠、あの空中戦艦に突っ込んでほしい」

「貴様、妾がいくら最強種のドラゴンといっても――あのような鉄の塊を貫通できると思っているのか?」

「思っている」

「さすがだな。妾の鱗より固いものなど存在しない」


 僕の言葉に呼応するよう、白雪が翼を天高く羽ばたかせ、


「行くぞ! 轟け――"紫風しふう"っ!!」


 ナコ、今すぐ君を助け出す。

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