第214庫 流れ着いたもの
旅の準備をするべく、僕とライカは朝から街中を歩く。
モーエン大陸を離れることも考慮し、まずは一番に――夜叉を尋ねた。
店内に入るや否や、店主から嬉しい一言がもらえる。
「リペアストーン、完売しましたよっ!」
口コミから広がっていき、一気に人気商品となったそうだ。
長期の旅にでる狩人の必需品として広まっているらしい。僕の見立ては見事に的中、綺麗好きな人が多い国サンサン――新たな冒険の必需品として、今後さらなる売上が見込めるだろう。
お金を工面できる貴重なパイプを築くことができた。
この国専用の通貨はあるに越したことはない。とにかくご飯が美味しいし――いずれ仲間と訪れた時のため、散財費用を貯めまくっておこう。
僕は追加のリペアストーンを1000個店主に渡す。
「いやはや、助かります。次の入荷はいつなのかと――問い合わせがすごかったんですよ」
「しばらく留守にするので多めに渡しますね」
「どこか行くのですか?」
「はい。海を渡ろうと思いまして」
「……海、海で思い出したのですが、今朝海岸に倒れていた人を、狩人が救助したという話は聞きましたか?」
店主は言う。
「以前、風の都ウィンディア・ウィンドの話をされていましたよね? 確か、その方もそこの大陸の人だったという噂ですよ」
「すいません。その人がいる場所を教えてくれませんかっ?!」
思わず、僕は詰め寄ってしまう。
あまりの勢いに店主が驚いていたが――それどころではない。間違いなく、僕たちの勝手知ったる大陸の住人に他ならないからである。
海岸に倒れていたという話、もしそれが事実だとするならば――状況はかなり悪化していると予想される。
店主はズレ落ちた眼鏡を直しながら、
「姫様のいるお屋敷はご存知ですか? 病院はそこの隣にありますよ」
「クーにぃ、ライカが案内するよっ!」
「ライカ、頼んだっ!」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくださいっ! リペアストーンの仕入れ代金、まだ支払っていませんよっ?!」
「店主さんを信用していますので次回で問題ないです。またバシバシ売っちゃってくださいね」
「しょ、承知しましたっ!」
店主にそう言い残し、僕とライカは夜叉を飛び出した。
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