第204庫 成長してるもん

 共存の道は築けた。

 本格的な協議は後日に、僕は白雪に本題を伝える。

 連なりの巨塔を訪れた理由、世界全体が危機に陥っていることを話した。


「……海を渡りたい。貴様、それは妾の背中に乗るということか?」

「その相談をするつもりで連なりの巨塔まで行ったんだ。僕のワガママを聞いてもらうことは難しいかな?」

「き、貴様、素直にもほどがあるぞ。この邪気のない顔付き――萌太郎を思い出す。萌太郎も似たようなことを言っていた」

「似たようなこと?」

「萌え太郎は少し変わった性格でな。よく妾を触手で縛ってもいいか聞いてきた。理由を尋ねても――そこに萌えるからとしか言わなかったな」

「萌え太郎さん、性癖が隠し切れていないっ!」

「妾が今より小さかった時代、一言で言うと幼少期だ。そのころは――まだ背も低く、胸もぺっちゃんこだったのだ」

「……胸がぺっちゃんこ、だった?」

「今、妾の方を見た理由を述べろ」

「いや、たまたまだよ」

「なにか知らんが、やけにイラッときたぞ」

「んんー? 白雪、ライカと体型変わりないよねぇ。全然成長してるように見えないんだけど――ライカの気のせい?」


 ライカが悪意なく核心を突く。

 その一言に、白雪が自身の胸の辺りを手で抑える。

 数秒後、プルプルと涙目で震え出した。

 こんな時、どんな言葉をかけるのが正解なのか?


「……白雪」


 未来はある、僕はそう言いかけて――口ごもる。

 このシチュエーション、つい最近もどこかで見た記憶がある。安らぎの満天、露天風呂での出来事、ナコとホムラの胸を見比べた時だ。

 経験を活かせ、僕――デリカシーを忘れるな。

 白雪の見た目は完全に高校生くらいの年代だが、ドラゴンの長という限りすでに成長仕切っている可能性だってある。

 最適解を見出だせ――僕はゆっくりと口を開く。


「小さい胸も大好きだよ」


 僕の言葉に場が凍り付くのがわかった。

 風花さんはマジかこいつといった顔、普段セクハラ三昧の局長すらもヤバいよそれはといった雰囲気をだしている。

 だが、今さら引くわけにもいかない――僕は突き進む。


「小さい胸も好きだよ」

「貴様、何回強調して言うつもりだっ?! しかも、なんで控えめに言い直したのだっ!? どうせなにも成長していない、妾はちんちくりんのままだっ!!」

「クーラ殿、今のはないですよ」

「うむ。ワシもどうかと思う」


 風花さん、局長が言う。


「こういう時だけ仲良く同調しないでくださいよっ?!」


 僕は脱線した話を戻すべく、咳払いを一つする。


「それで、海を渡るって話はどうかな?」

「ふんっ、大サービスだ。妾が背に乗せてやろう。貴様の言う話が本当ならば、モーエン大陸も危ないからな」


 白雪は付け加えるよう、人差し指を立てながら、


「しかし、一つだけ条件がある」

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