第197庫 指切りげんまん
翌日。
旅の支度を整え――僕とライカはドラゴンの巣に向かう。
ドラゴンとの対話に失敗した際、サンサンが襲撃されてしまう可能性もある。局長たちは最悪の場合に備え、サンサンで待機してもらうようお願いした。
……失敗するわけにはいかない。
失敗すれば、サンサンの被害は――甚大なものとなるだろう。
だが、それよりもフレイムドルフによる侵略の可能性を危惧した。
僕の言葉を信じてくれたこと、紅桜組の皆に心から感謝する。
局長曰く、ドラゴンの巣には定期的に食材を運んでいるそうだ。
それにより、友好関係を構築していると言っていた。今、僕とライカはその場所に向かっている。
森の中を歩き、川を超えて、休憩を挟みながら――僕たちは少しずつドラゴンの巣に近付いていた。
「クーにぃ、本当にドラゴンと話なんてできるのかなぁ?」
「一つだけ、それと似たような内容で――成功した例がある。ライカは白の宝物庫イレシノンテは行ったことある?」
「あるよ。最深部にいる白虎が格好いいよねぇ」
「その白虎だけど、今は僕たちの仲間なんだよ」
「えぇっ、すごいねぇっ!」
「白虎にとどめを刺す瞬間、殺さないでってナコが言ったんだ。言葉が通じる相手であれば、モンスターだろうと可能性はあるってことを見せてくれたんだよ」
「ライカ、あの毛に埋もれてみたいっ!」
「あはは、シルクみたいな触り心地で気持ちいいよ」
やはり、毛の質感は気になるようだ。
その時、ライカが耳を左右に動かし――なにかの気配を感じ取ったのか、急に険しい表情へと変化する。
「……クーにぃ、でっかい魔力が流れてきてるよ」
ライカが見つめる先、古ぼけた塔がそびえ立っていた。
まだ小さく目視できる程度だが、局長から聞いていた外観と一致する――ドラゴンの巣はあそこに違いない。
しかし、ライカの魔力感知は強力である。
この距離、僕のレベルでは魔力の魔の字も感じない。忍者というジョブ性能だけではなくライカ自身も優秀なのだろう。
「もし戦闘になったら勝てると思う?」
「めちゃくちゃ強い。今もライカたちに気付いて――威嚇してる。普通に戦闘したら難しいと思うなぁ」
ライカは断言する。
「でもでも、普通に戦闘をしたら――だからねぇ」
「最悪の場合、勝算はあるんだね」
「ライカの"禁術"で切り抜けるよ」
「その禁術は大丈夫なのかな」
「ライカが制御できない禁術は多いけど、制御できる禁術もあるよ。口寄せの術、九尾ちゃんは使わないから安心してねぇ」
どうやら、禁術は一つではないようだ。
心強くもハラハラする――まさに、諸刃の剣である。
使い方を誤らないよう、ライカには注意をしとかねばならない。
僕はライカに小指を差し出し、
「また粒子になったり大陸の一部が吹き飛んでも困るから、口寄せの術だけは使用禁止でお願いするよ――僕と約束できるかな?」
「うんっ! クーにぃと約束するぅっ!」
指切りげんまん、ライカがニコッと微笑むのであった。
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