第166庫 蒼と朱の光

「あなたに引導を渡すっ!!」



 ゴザルが一足飛び、フレイムドルフに斬りかかる。

 フレイムドルフはそれを剣でいなし、即座に反撃――それをゴザルがいなし返し、さらに斬りかかる。

 思わず見入ってしまう、達人同士の戦いがそこにあった。

 HPやMPが数値としてない今、急所に当たれば絶命は必至――どちらも臆すことなく攻撃を繰り出し合う。

 皮一枚のせめぎ合い、剣が空を切る音が要塞内に響き渡っていた。


「はっはっは、なんと洗練された動きだっ! 武者ゴザルよ――"玉炎"を纏った我に並んで来るかっ!!」

「並ぶ? 私を甘く見ないことね」

「ほう、並ぶだけでは不服と言うのか」

「ええ、追い抜かすのよ」

「揃いも揃って面白い女たちだ。美貌も申し分ない、我が進む王の道――その妃になるという手もあるのだぞ」

「百万回転生してもごめんだわ」

「くっくっく、もう振られてしまったか」

「お喋りは終わりよ。一点集中――"無我の境地"っ!!」


 ゴザルが武者のスキルを発動する。

 このスキルはなにかのステータスを低下する代わりに、なにかのステータスを上昇することができるという天秤のようなスキルだ。


「私の防御を力に、視力を速度に変換するわ」


 ゴザルの刀身が銀色に光り輝く。

 そして、言葉通り目を瞑り――居合いの構えを取った。この一刀に全てを賭ける、全身全霊を体現したかのような形だった。

 フレイムドルフはその姿を見て剣を頭上に掲げる。


「決着といくか、我も今持つ至高の一撃にて応じよう」


 双方、必殺が届き合う間合い。

 嵐の前の静けさか、僕とナコはただゴザルの勝利だけを願い続ける。どんな結末が待っていようと――見届けると誓った。

 ナコは祈るよう手を組みながら、


「お侍さんなら、絶対に勝ってくれます」

「また、ゴザルに任せっきりになっちゃったな」

「そんなことはありません。クーラが与えた傷は――お侍さんの勝利の後押しをしてくれるはずです」


 真っ直ぐな瞳にて、ナコは二人の戦いを見つめ続ける。


「私もいつか、あの領域に――必ずいきます」

 


 ――「無の刃――神威っ!」「舞い降りよ、朱雀っ!」



 蒼と朱の光が――衝突する。

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