第109庫 解放
「もう一つ、魔人について教えてくれないかしら」
「銀の方、死ぬ間際の余に中々無理を言うではないか」
「約束でしょ。頑張って話してちょうだい」
「くっくっく。余の配下にお前のようなやつがいたら、軌道を無理矢理にでも修正してくれたやもしれぬな」
「そうね。私だったら斬り伏せてでもあなたの奇行をとめるでしょうね」
ゴザルの容赦ない言葉にガラスティナが笑う。
「魔人とは人間を超越した存在、老いることのない永遠の存在だ。だが、あくまで魔人とは人為的に作られたものとなる」
「人為的? 作られた? どこのどいつがそんなことをしたの?」
「魔の神、
魔人の上位種までいるというのか。
「余が魔人となった経緯は魔神が契約を持ちかけてきてな。名を『グラファザール』と言ったか。契約による代償は国の行末を見ることといっておった。滅んだ今を見て大笑いしているやもしれぬな」
「ずっと一人でここにいて、よく気が狂わなかったわね」
遠回しに自決を考えなかったのか、と問いてるのだろう。
自らに終止符を打つ、ガラスティナはゆっくりと首を振る。
「自ら死んで逃げることは信じて付いて来てくれた民を裏切る行為であろう。余は自身を戒める意味を込めて待っていたのだ。余を解き放ってくれる強者をな」
「あなたのワガママのおかげで私たちは大迷惑よ」
「そう厳しいことを言うてくれるな。お前たちに出会えたこと、余も長い間待っていた甲斐があったぞ」
ガラスティナの身体が少しずつ薄くなっていく。
僕たち人間と違い、魔人は特殊な構造でできているのだろうか。不死という人知を超えた存在、永遠と儚さは紙一重なのかもしれない。
「銀の方、最後に余も質問をいいか?」
「ええ。なにかしら?」
「余は確かにお前の心臓を突き刺したはず、どうやって生き延びたのだ」
「心臓の位置を動かして避けたのよ」
「……くっくっく。そうかそうか、死ぬ間際によいことを聞いた。魔人化などと道を逸れずにたどり着ける境地もあったということか」
「仲間と共に強くなれるのよ。次があったら間違えないことね」
「その次があることを願い、今あるウィンディア・ウィンドの繁栄を願い、余はこの地で散ろうではないか。ああ、それと城内にあるものはもう余には必要ない。腐らせるよりは有効利用するが吉、今回の報酬として持って行くがよい」
ガラスティナの身体が霧散していく。
「さらばだ。余を解放してくれたこと――感謝する、勇者たちよ」
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