第82庫 白虎攻略戦 前編

 翌日。

 イレシノンテ、地下21階から30階を進んで行く。


 昨日に引き続いてゴザルさんの修行は継続中――僕とナコが前列、後列にゴザルさんとキャロルさんというフォーメーションを組んでいた。相変わらずナコの奮闘ぶりが素晴らしく、僕たちは難なく白虎がいるフロア前までたどり着いていた。

 あとは、目の前の大きな扉を開くだけである。


「今さらなんだけど、ちゃんと白虎湧いてるかしら」

「うーん。白虎はネームドだからなぁ、いやでもさすがに誰も狩ってないでしょ」

「湧く時、湧かない時があるんですか?」


 ナコが首を傾げながら言う。


「ネームドは時間ポップ、特殊な条件によるポップと2種類あってね。白虎は前者に該当するんだ」


 誰かが倒していたとしたら面倒ではある。

 白虎は討伐されてから一週間、ポップすることがないのだ。新たな白虎を待つためにはかなりの滞在を余儀なくされる。


「大丈夫なのです、扉の奥から白虎の気配を感じます」


 キャロルさんが言う。

 盗賊のスキル、全感知によるサーチだろう。レベルが上がるに連れて精度が増していくという優れものだ。超越者ともなると、モンスターの識別くらいはお手のものなのかもしれない。

 ゴザルさんが扉に手をかける。


「サーチありがとう、無事にいてくれてよかったわ。皆準備の方はいいかしら?」


 白虎は基本的にパターンが決まっている。

 前半パートは近接メインの攻撃、後半パートは手下を召喚してきて全体攻撃という流れだ。単純明快にゴザルさんが白虎のターゲットを固定、戦いの最中に出現させてくる手下を僕たちで処理する。

 ゴザルさんの戦闘力に全てを賭けた作戦である。

 現在の構成は武者、触術師、魔法少女、盗賊――清々しいまでの脳筋構成なので、触診を持つ僕が緊急時の回復担当となった。


――「問題ない」「行けますっ!」「バッチリなのです」


 各々の返答を境目に、ゴザルさんが勢いよく扉を開いた。


《 勇気ある挑戦者、我に挑んでくるというのか 》


 白虎が呟く。

 ゲーム時にもあったお決まりのセリフ、実際に見る白虎はなんと雄々しい姿なのだろうか。普通の虎の数倍くらいの体躯、白く輝く毛並みは見るものを圧倒させるオーラを放っている。

 本当に勝てるのかと不安になってきた。

 上級ダンジョン白の宝物庫イレシノンテの主、今まで相手にしてきたモンスターとはレベルが違う。さすがのゴザルさんも萎縮しているのでは――、


「私がフルボッコにしてあげるっ! 泣き叫んで涙流しまくりなさいっ!!」


 ――躊躇いなく一直線に突っ込んだ。

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