第50庫 ナコさんご立腹 その1
目覚めると、赤い空が視界に入った。
もうすでに夕暮れ時か――頭から伝わる柔らかい感触、急に倒れた僕を介抱してくれていたのだろう。
ナコが意識を取り戻した僕に気付き、
「クーラ、起きましたか」
「……さあ、クエストの報告して帰らないと」
「そうじゃないですよね?」
「膝枕ありがとう」
「違いますよね?」
「ご、ごめんなさい。それにしてもちょっと近くない?」
「知、り、ま、せ、ん」
かなりご立腹のようだ。
目の前も目の前、超絶至近距離、額と額が引っ付くのではという近さでナコが僕を睨みつけてくる。
「クーラのバカ馬鹿バカ」
「もう大丈夫だからさ」
「……心配させないでください。なにか試すのであれば鍛錬場でよかったじゃないですか」
正論だぁっ!
今後に関わる重要な要素だったので、ついつい気が急いてしまった。
「本当にごめん。ただ、大収穫だったよ」
僕は魔力についてわかったことを一部始終説明する。
スキルの仕組みによる消費、消費をしすぎたことで身体にかかる負荷、
「私にも仕組みがあるのでしょうか?」
「黒い波動をまとう時とか暗波を放った時とか、眠くなったり身体からなにか抜けていく感覚とかない?」
「今のところはないです」
「ジョブごとに魔力が消費される仕組みはありそうなんだよね。これからはそこを模索しつつ戦っていく方がいいかもしれない」
ハッキリ言うと、これは自身のウィークポイントだ。
僕の場合、触手の大きな損傷を2回修復すると魔力が空になるいうことがわかった。
今まで触手がここまで損傷するタイミングがなかったため気付かなかったが、暗波をガードしたという偶然は大きな糧になったといえる。
「そういえば、僕はどれくらい眠っていた?」
「二、三時間ほどですね」
今は身体に異常はない。
魔力がゼロの状態から自然に全快するまでかなりの時間がかかっている。僕もナコも緊急用のアイテムを持っておく方がいいかもしれない。
ゲームではお馴染みと化したもの、回復に関して即効性抜群の消費アイテムである。
「今後は魔力薬を常備しておこう」
ナコが魔力薬? と首を傾げながら、
「私のアイテムボックスに最初から入っていたやつですか?」
「その認識で間違いないよ。ただ、初期に配給されている魔力薬は効果が薄いんだ。その上に上級の魔力薬があるから、それを何本か手に入れよう」
確か、キローヒさんが生産ギルドって言ってたな。
生産職のジョブが集まるギルド、錬金術師がいてもおかしくない。
ウィンウィンに帰ったら、一度お店を尋ねてみるとしよう。
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