廃墟を冒険しよう

「準備はこんなものでいいですかね?」

「ま、こんなもんだね。距離的には数時間で付ける場所だし、いいだろう」


 僕は母屋から干し肉と装備を引っ張り出して、出かける準備を終えた。

 今回もニートピアの全兵力での出撃だ!


 全力、と言ってもたった4人と1機だけどね……。

 ま、まあ。それでも全力には違いない。


 前回の狩猟もそうだったけど、完全に留守にしないといけないから

 その間のことも考えると、もうちょっと人手がほしいなあ。


 ハクとクロの二人が一時的に手伝ってくれているが、まだまだニートピアの人手不足感は否めない。拠点の留守を守ってくれる人がほしいよね。


 さて、装備は僕が引き続きマシンガン。

 マシンガンの弾丸はあと弾倉が二つ分。一つに40発入るから80発だ。


 ギリーさんはライフルの弾が心許なくなったので、ピストルも一緒に持った。


 僕とギリーさんは武器なんかの必要な荷物だけ持って、残りの物資はドラゴンとグリフォン、獣の姿になったハクとクロに持ってもらうことにした。


 この姿だとたくさんの物が持てるので頼もしい。


 戦いも予想されるから、今回の探索では人の姿をとるより、この姿のままがいいと思うのだけど、二人によると、この姿はお腹の減りが早いらしい。


 なので、旅のするときなんかは人の姿をとる。

 そっちの方が。長距離移動に向いてるらしい。

 だからサバンナで出逢ったときは人の姿だったのね、と納得してしまった。

 

 彼女たちの能力は頼もしいけど、実際に食事量は凄まじいものがあるからな。

 今回は近い場所だから良かったけど、長距離だとそうは行かない。

 なんとも一長一短だ。


 ……よし、荷造り完了!


「準備はこれでいいな。出発!!」

「「「おー!」」」

「……で、どこまで散歩にいくんだー?」

「ハク、貴方、何を聞いてらしたの?」

「ハハハ……じゃあ、もう一回説明しようか」


 僕は懐から地図を取り出して、もう一度、これからする事の説明を始めた。


「まず、この地図の廃墟へ行きます。で……多分中には生き物が入り込んでたりとか、そういう危険があると思うので気をつけること!」

「何で廃墟にいくんだー?」

「ハク、人間は廃墟で昔のモノを集めるのが好きなのですわ」

「おーわかるぞ、じいちゃんがキレイな石を集めてたけど、ああいう感じだな!」


「ま、まぁ、それと似たような感じ? なのかなぁ……」

「キュイ!」


「廃墟にはもしかしたら、電気を使える様になるパーツや、電気の機械そのものが残ってるかもしれないからね。それを探しに行くんだ」

「そうなのかー」

「わかったら行くよ。このまま話してたら、着く頃には日が暮れちまうよ」

「「おー!」」



 僕たちはニートピアを出て、地図を頼りに南へ進んだ。

 次第に草は少なくなり、地面は赤っぽい土色から、白っぽい黄色へと変わった。


 砂だ。


 ニートピアの南は、サバンナと砂漠が入り交じる、そんな場所になっていた。

 植物も乏しく、ニートピアの周囲以上に、日を遮るものがない。


 移動を続け、太陽が天頂に近くなった頃だ。

 さらに強くなった日の光は、僕の肌に痛みすら感じさせる。

 しかも、この光は地面の砂で反射して上と下から二度焼きしてくるのだ。

 ぐえー。たまったもんじゃない。


 まるで生き物が住める環境とは思えないな。


 まさかこんな過酷な環境で生息している生物などいないだろう。

 が、僕のそういった考えとは裏腹に、たびたび砂漠の中で動くものが見えた。


「あれは……?」

「ほっときゃ何もしてこないよ。サソリさ」

「えっ、あの大きさで?」


 反り返って毒針を前に向けている尻尾。

 横に広げた2本のハサミの付いた腕。

 キチン質の殻からなる体躯。


 それぞれの要素は、サソリと言えばサソリだ。


 だけど、砂の上をうサソリの大きさは子犬くらいあった。


 こう、なんだ。絶妙な大きさが嫌悪感を誘うな。


 あんまりにもデカいと非現実的でモンスター感がある。

 だけど、子犬くらいの大きさだと、怖さより気持ち悪さのほうが勝る。

 人によっては「たまらん」となるかもしれないが、僕は遠慮する。


 まあ、放っておけば悪さはしないらしいし、サソリは放っておこう。


 さらに南へ向かうと、荒廃した道路とぶつかった。

 地図の表記によると、この道路沿いに目的の廃墟があるはずだ。


「目的地が近くなってきましたね」

「そうだね。この道、だいぶ荒れてるね」


 ギリーさんの言う通り、道路のアスファルトは風と日光で猛烈に風化がすすんでいた。道路の一部には、完全に自然に還っている場所すらある。


「こんな風化してるんじゃあ、廃墟の品物には、期待できないですかね?」

「サトー、逆だよ。雨なんかが多い、湿気の多い場所のほうが風化してるよ」

「そうなんですか?」


 ギリーさんは、僕の疑問の声を鼻で笑った。


「だからアタシたちスカベンジャーはこういう砂地を往くのさ。だから砂エルフ。もう忘れたかい?」

「あーそれで! なるほどなぁ」


 僕らは見つけた道路の上をなぞって進む。

 しばらくすると、目的の廃墟が砂塵の向こうに見えてきた。


「どうやら、あれみたいだね……」

「あれは――」


 砂の中にたたずんでいた廃墟は、四角い長方形をしていた。

 ごく一般的で、奇異なところが何一つもない現代的な建物。


 建物の近くには、巨大な電飾看板がある。

 看板自体はすでに割れて朽ち果て、中はがらんどうになっていた。

 貝が中身を食われ、殻だけを残している。そんな様子を想起させる。


 そして、建物の屋根近く、上部の壁は、退色した三色のプラスチックのプレートがハチマキのように巻かれていた。これには心当たりがある……。


 うん、どうみてもコンビニの廃墟だ。


 「文明の廃墟」なんていうから、軍事施設とか研究所みたいなのを勝手に想像してたが、そりゃ、普通に考えたらこういう廃墟のが多いよね。


 さて、あの中には、一体何があるんだろうな。



※作者コメント※

この建物ってなぁに?

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