厄介な読み手

そうざ

An Awkward Reader

 ――書評――2023年8月3日

 以前この著者の処女作を拝読して、その出来栄えに感動した者です。同じ著者の二作目なのでとても期待して手に取りました。

 しかしながら、私の期待は打ち砕かれました。もちろん悪い意味で。世紀の大駄作と言わざるを得ません。

 その理由を一言で言うのならば、予想の範疇を出ていないからです。全体的に想定内で予定調和なのです。

 登場人物の性格付けや行動原理、舞台設定、物語の展開やその結末に至るまで、何から何まで先んじて読めてしまうのです。

 はっきり言って、どこかで読んだことのあるお話です。もしかしたらパクリなのかと思ってしまいました。

 凡百な読者であれば欺けるかもしれませんが、私のような読書歴の長いすれっ枯らしは煙に巻けません。

 いくらデビュー作が素晴らしかったからといって、この素人レベルの作文(作品ではない)を世に出してしまう著者の見識を疑います。周辺関係者も同罪です。デビュー作のネームバリューだけで売れると判断したのでしょうか。

 本当に残念な読書体験でした。唯一の救いは誤字脱字がなかったことです。



 ――書評の訂正――2023年8月10日

 先般私が書いたレビューを訂正したいと思って再び筆を取りました。

 まずは著者様に対して一言お詫びを申し上げなければなりません。

 実は本作を拝読した際の私は、まだ自分の予知能力に気づいていませんでした。それが酷評をしてしまった大きな理由です。

 つまり、本作を読む前にその内容が私の頭の中に浮かんでいたのです。ありきたりの作品と感じたのも無理からぬことです。既に本作を読んでいたのも同然なのですから。

 私事になりますが、近頃妙に勘が働くと思っていました。急な雨を回避できたり、大事故が起きるのを知っていたり、三日後に誰が訪ねて来るとか、今夜スーパーで何が売れ残るとか、まるで百発百中の占い師のようです。

 でも、まさか未来が見えているとは考えもしませんでした。試しに宝くじを買ってみたら全て当たりました。現在、私は億万長者です。

 金持ち喧嘩せずの例えもございます。お詫びと言ってはなんですが、本作を改めて千冊ほど購入させて頂きました。邪魔なのですぐに破棄しましたが、ほんの謝罪の気持ちでございます。

 最後に、改めて本作の感想をお伝えしたいと思います。今度は飽くまでも客観的に再読いたしました。その結果、デビュー作には遠く及ばず、駄作は駄作でした。誤字脱字がないのはいいと思います。



 ――書評の訂正の訂正――2023年8月17日

 前回の訂正にて私自身が予言者であるかのように書いてしまった事を謝罪するとともに撤回、訂正したいと思い、再び筆を取りました。

 大金持ちになったのは本当です。その後、色んなギャンブルに手を出して常に勝ち続けています。毎日笑いが止まりません。

 それはともかく、私には予知能力などありませんでした。お恥ずかしい話ですが、完全に勘違いでした。

 本当は、私は4次元界から転生した人間だったのです。4次元界では当たり前の能力を持ったまま3次元界にやって来たのです。

 といっても、私の見た目は普通の女子ですし、普通に某役所に勤めている社会人です。

 ご存知かどうかは分かりませんが、4次元は縦、横、高さに時間をかけ合わせた世界です(1次元から3次元までの説明は省きます、今は関係ないので)。

 4次元界と3次元界とでは時間の概念が異なりますが、どう説明したら理解していただけるでしょうか。

 例えば本を読むとしましょう。3次元人は1ページ目を読んでいる時に2ページ目以降の内容がまだ分かりません。2ページ目を読み始めても、次の3ページ目に何が書かれているのかは分かりません。でも、4次元人は本を開いた途端に全てのページが見えてしまいます。最初から最後まで一瞬にして分かってしまうのです。

 ご理解いただけないのでしたら、こういう例えはいかがでしょうか。3次元人はロール状の映画フィルムを一コマずつ順番に観ていかなければなりません。次元が低いので仕方がありません。

 一方、4次元人はロールを解いて一本の長いフィルムにしたものを俯瞰して観ることができるのです。これが時間に囚われない4次元界から転生した私の能力です。お分かりになりましたでしょうか。当然ギャンブルの一部始終が見えますから負け知らずです。

 折角なので、また本作を千冊くらい購入させていただきました(すぐに処分しました)。

 最後に、改めてご著書の感想を記させていただきます。前回にも増して俯瞰的に再読いたしました。その結果、100点満点で言えば5点くらいでしょうか。やっぱり誤字脱字がないのは評点に値します。



 ――書評の訂正の訂正の訂正――2023年8月24日

 前回の訂正にて私が4次元人だと明言しましたが、よくよく考えればそんなわけがありません。撤回と訂正をしたいと思い、再び筆を取りました。

 私は未来からやって来た未来人です。これが一番しっくりくる結論です。

 言うまでもなく、未来人なので本作の内容を知っていました。一度読んだことのある本をまた読んでしまったのですから、既視感を覚えて当然です。大金持ちに成れたのもまた然りです。ついさっきご著書千冊を破棄したところです。

 最後に、改めて本作の感想を記させていただきます。既に何度も再読していますので、内容は嫌というほど頭に入っています。その結果、誤字脱字がないことだけは記憶に残っています。



 ――書評の訂正の訂正の訂正の訂正――2023年8月31日

 よくよく見たら誤字脱字がありました。『くち笛』と書くべきところが『くにがまえ笛』になっています。善処願います。

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