第24話 サロンにて

学園の見学から屋敷に戻るとお父様からサロンへと来るように言われた私とお兄様はその足ですぐに向かった。

サロンにはお父様とお母様が二人でお茶をしているところで、丁度良いタイミングに戻って来たので呼ばれたようだった。


「お帰りなさい、アルス、ルナ」

「お帰り。楽しかったかい?ルナ」


にこやかに微笑んで訪ねてくる二人にルナはソファに座りながらこちらも笑顔で頷く。


「はい!お父様、お母様。凄く楽しかったです!あと少しで学園に通えるのが益々楽しみになりました」

「それは良かったわ」

「うんうん、ルナが楽しく通えそうなら良かったよ」


私が本当に楽しかったのだと体一杯に表現をしてみれば二人も嬉しそうに返事を返してくれる。


「最初はお兄様の教室に行ったんです!あ、そしたら急に王太子殿下が現れて驚きました」

「ん?殿下が来たのかい、アルス?」


王太子殿下が来たことを思い出して伝えれば、お父様の表情が少し堅いものになる。余計なことを言ったかな、と思ったがどうせ後でお兄様が話すだろうし良いかと思い直す。


「どうやら今日、僕がルナを連れて学園に行く事を誰からか聞いたようで......急に現れて正直なところ驚きました」

「ふむ。まぁあの方は抜け目のない方だからな.....どうせ影でも使って調べさせているのだろう。まぁお前を側近にと言ってる事だし本当にお前や我が家が困る事はしない筈だ」

「ルナとの時間を潰されるのは一番僕が嫌な事ですけどね」

「だが素直に直ぐに帰ったんだろう?それぐらいは許容範囲だと考えたんだろう」


つまりお兄様の行動は王太子殿下には筒抜けで、この範囲なら起こられない線引きを正しく理解されてると言うことね。お母様や使用人達の噂で王太子殿下は凄く優秀だと聞いた事があるけど、本当に優秀なんだと実感する。でもお兄様はそんな殿下があまり好きではないようだ。まぁ確かに自分の思考を全て読まれていたら誰だって嫌よね.....。


「お父様、王太子殿下は私とお兄様に挨拶をされて直ぐに帰られましたわ」

「そうか。王太子殿下は馬鹿ではないから引き際を知っているんだろうね。まぁそうでなくては困るけれどね」


お父様も王太子殿下に手厳しいみたい。


「ふふふ、ルナちゃん。お父様とアルスはルナに王太子殿下を近づけさせたくないだけなのよ?」

「え?」

「今、ルナに近づいて来るのはルナを婚約者にしたいと思ってる子息が多いのよ?王太子殿下もそう。婚約者が公爵家の令嬢なら王太子殿下の後ろ楯としてもこれ以上ない良縁でしょう?」

「......」


そうか。確かに王太子殿下にとって公爵家の令嬢を婚約者に据えればこれ以上ない程王太子としての地位が確立するんだ。そう考えたら私達兄弟に近づくのも、仲良くしようとするのも理解出来るわね。


でも......


「......私は王族の婚約者にはなりたくないです......私はお父様やお母様みたいに自分が好きになった方と結婚したいです」


その時脳裏に浮かんだのが誰なのか、私はまだ自分の気持ちを自覚できてはいなかったのだ。





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