第23話 シスコンとブラコン

まるで嵐のようにやって来た王太子殿下は嵐のように去っていった。一体何の為にわざわざやって来たのだろう?まさか本当に私に会う為だけに来たんじゃないわよね......?もしそうだとしたら王太子殿下は余程お暇なのかもしれないわね......


ルナは自身に向けられた世間一般の反応を知らない。領地に閉じ籠り、今までで社交らしい社交をしてこなかった弊害でもあるのだが本人だけがその認識がない。だからこそ余計に周囲の身内がヤキモキする羽目になるのだが......。


「ごめんよルナ。まさか殿下が態々休暇中にこんな事で学園に来るとは思って無かったよ......本当にあの人は」


心底困ったように溜め息をつくお兄様に私は笑みを浮かべる。


「いえ、大丈夫ですわ。それよりもお兄様、王太子殿下の側近候補だったんですね!流石お兄様ですわ!!」


次期国王陛下である王太子殿下の側近候補なんてなりたくてなれるものではないし、お兄様がそれだけ優秀だからって事よね。


「僕が公爵家だから自動的に側近候補になるだけだよ。僕よりも優秀な候補はたくさんいるよ。それに側近になってしまうと今よりも忙しくなってルナに会える時間が少なくなってしまうから、僕としてはあまりなりたいとは思ってないんだよ」

「お兄様......それは......お気持ちは嬉しいですけどお兄様の将来の方が大事ですから」


私の事をとても大事にしてくれるお兄様の気持ちは凄く嬉しいが、私の為にお兄様の将来が途絶えてしまうのは申し訳なさすぎる。


『シスコンもここまで来るとスゲーな』

『カリト......』

『まぁお前も相当なブラコンだから釣り合いが取れてて丁度良いんじゃないか?』


そんな身も蓋もない......そりゃあ今世の自分はかなりブラコンだと自覚はあるけど......


『良いんじゃないか?今のお前、凄く楽しそうだしな。昔は何か、本当に生きてるのかわかんねーぐらい感情がなかったもんな』

『.....そうだったかしら?』

『ああ、そうだったよ』


自分ではあまり意識をしたことがなかったが、彼らから見たら魔王だった時の私はそう見えていたのだろう。


「さぁルナ、思いがけない邪魔が入ったけど次は何処を見たい?」

「お、お兄様!?」


王太子殿下が居なくなったのを良いことに、ニコニコと言いたい放題のお兄様に逆に私の方が慌ててしまい、見たい場所を決められず結局その後お兄様オススメの場所を順番に案内されたのだった。









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